高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す～地味な私が本命だなんてホントですか？～

　琴音は盗み聞きしてしまった電話のことも正直に打ち明ける。

「琴音と最後に会った日……あぁ、あれか！」

　合点がいったという表情のあとで、彼は深いため息とともに頭を抱えた。

「そうか。あの電話をそう解釈されていたのか」

　自身の髪をくしゃりとかき混ぜるその仕草から、彼の困惑が伝わってくる。もちろん戸惑っているのは琴音も同じだ。

（つまり黎治さんは、桜さんとは結婚しなかった。そういうことなの？）

「順を追って、説明しよう」

　黎治は深呼吸をひとつしてから、話し出す。

「たしかに社長令嬢の桜さんは三年前に結婚したが、相手は俺じゃない。十和田和志(とわだかずし)、俺と同期入社のパイロットだ」

「黎治さんではない……別のパイロット？」

　破談になったとか、そういう方向性を想像していたので、あまりにも意外すぎた。すぐには理解が追いつかず、ぽかんとしてしまう。

「あぁ。経緯はさっぱりわからないんだが、なぜかＢＢＬ社内でも、桜さんの相手は俺だという話が半ば事実のように伝わっていたみたいで……都度、否定するのに苦労した。でもまさか、君にまで誤解されていたとはな」

　黎治の顔には絶望の色が浮かんでいる。

「琴音が聞いた電話の相手は、別の同期だ。和志と桜さんの挙式予定について聞かれたから説明していたんだ。俺と和志は親友と呼べる仲だから」
「そ、そんな！」