高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
 けれどそう言われてみたら、あのときわずかに感じた違和感に納得がいく。

(自分の結婚の話なのに、妙にビジネスライクというか……他人事みたいに話すんだなって思ったのよね。まさか、本当に〝他人事〟だったとは!)

「あぁ」

 嘆く気持ちがそのまま声になり、琴音はがっくりと脱力する。どこか呆れたような口調で彼が聞く。

「けど〝俺と桜さんが結婚するかもしれない〟ってニュースは君の耳にも届いたのに、〝実は違った。相手は和志だ〟ってニュースのほうはどうして知らないんだ? こっちもBBLの社内では話題になったと聞いているが」

 その理由には、思い当たる節がある。

「それは、舞さんが……」
「舞さん?」
「仲良くしてくれていた女性整備士の先輩です」

 実は彼女、黎治がイギリスに行くのとほぼ同時期にBBLメンテナンスを退職してしまったのだ。体調不良が続き、医師に整備士の不規則な勤務シフトも原因のひとつだと指摘されたようで、新しい仕事はまったく別業界の事務職と聞いている。

 職場が離れてからも琴音は何度かメールを送ったが、体調が思わしくなかったのか舞からの返事はそっけなく、そのまま疎遠気味になっていた。

「私の情報源は、ほぼ彼女だったので……」
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