高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
「ごちそうさまでした。図々しく三人ぶんも、すみません」
「礼には及ばないよ」

 そうスマートに言ってから、彼はクスリといたずらっぽく笑う。

「これは俺の戦略だしな」
「戦略?」
「そう。律儀な性格の君は、俺になにかお返しをしないと……と考えるだろう? そうなれば俺の勝ち。次の約束を取りつけやすくなる」

 美しい彼の顔が近づいてきて、耳元でそっとささやかれる。

「知っているだろう? 俺はズルい男なんだ」

 その声音は……甘やかな毒を含んでいた。

 その夜。

 スヤスヤと眠る双子の髪を順に撫で、琴音は口元をほころばせる。

(いい夢、見てるのかな?)

 ふたりとも黎治をすっかり気に入った様子で、帰宅してからも彼の話題で持ちきりだった。

『レイしゃん、かっこよかったぁ』

 凜がそう言えば、蓮も満面の笑みで同意して……。

『うん! またあそぼっ』

 何事にも物怖じしない凜はともかく、慎重な性格の蓮まで懐いたのは少し意外だった。

(やっぱり、パパだから……なのかな)

 手を繋ぎ、向かい合って眠るふたり。横顔は、やはり黎治の面影が色濃い。

(黎治さん、きっと察したんだよね)

『その顔で全部わかったから』

 あの台詞はきっと子供たちのことも含めて、だろう。

 これから、彼とどういう関係を築いていくべきなのか琴音はあらためて考える。
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