ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
 双子の存在を隠していたのは、黎治が社長令嬢と結婚したものと思っていたからだ。彼のキャリアと家庭を壊してはいけない。そう、思っていた。もちろん、隠し続ける罪悪感がまったくなかったわけではないが……。

(でも黎治さんは独身だった。それなら、蓮と凜にとっても、黎治さんにとっても、真実をあきらかにすべきよね)

 ふたりは間違いなく彼の子どもなのだから。

「黎治さんの推測したとおり、地元に帰って結婚するという私の話は真っ赤な嘘です」

 ごめんなさい。そう告げたあと、琴音は決意を固めて彼を見る。

「私の産んだ双子、蓮と凜は……あなたの子どもです」

 美しい黎治の瞳が大きく見開かれる。

「そうか」

 かすかに震える唇から、そのひと言だけが漏れた。

 今、彼の心に浮かぶ感情はどんなものなのだろう。驚き? それとも黙って勝手なことをした琴音への怒り?

 彼は天を仰ぐように顔を上に向け、ふぅと細く息を吐く。

「弱ったな。どうしようもなく、嬉しい」
「え?」
「いや。ふたりは子どもの頃の俺によく似ていたし、時期的にもおそらく……とは思ったんだ。けど確信が持てるほどではなかったから」

 彼の頬が、わかりやすく緩んでいる。

(そうだったんだ。私はてっきり、すべて見抜かれているのだとばかり)
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