高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
 双子の育児はもちろん大変だった。だけど、幸せは二倍以上。

 シングルマザーだけど、ひとりじゃなかった。いつだって蓮と凜がそばにいてくれた。

「ふたりとも……黎治さんによく似た、優しい子たちです」

 クスリと笑う黎治の笑顔はやっぱりふたりにそっくりだ。

「あのふたりは君にそっくりだよ。かわいいところも、優しいところも」

(あぁ、そんな目で見つめられたら自惚れてしまいそうだ)

 たじろぐ琴音に彼の美しい顔面が迫ってくる。あっという間に魔性の眼差しにとらえられてしまう。

「琴音、キスしていい?」
「え? や、だって、ここ、職場で……」
「俺がその程度に怖気づく男だと思うか?」

 強気な態度で、彼は琴音の後頭部に手を回す。

「むしろ場所以外の理由で拒まれなかったことが自信になった」

 もう一歩、彼は琴音との距離を詰める。

「ダ、ダメです。ま、まだ!」

 パニック状態になった琴音は必死に彼の胸を押し返す。

 クスクスという笑い声が頭上に降ってきて、琴音はおそるおそる彼を見あげる。

 笑いをこらえている彼の様子に、琴音は抗議の声をあげた。

「こ、こういう冗談は質が悪いですよ!」
「キスをしたい気持ちは本気も本気。冗談じゃない」

 さらりそんな言葉を返してくる彼がますます憎らしい。

「まだ。ってことは、期待は持っていていいんだよな」
「うぅ……」
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