高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
「子どもに自分の趣味を押しつけたらダメだとわかってはいるんです。でも見かけると私自身が読みたくなって、ついつい手が……」
「好きなものが増えるのは悪いことじゃないし、別に布教してもいいんじゃないか?」

 彼らしい、前向きな意見だ。黎治はふたりに顔を向け、にこりと笑む。

「ふたりは飛行機好きか?」
「うん、ちゅき」

 恥ずかしそうに、モジモジしながら答えたのは蓮のほう。

「おっ、わかってるなぁ。飛行機、かっこいいよな」

 黎治はまるで自分が褒められたかのように、嬉しそうだ。

 琴音の飛行機オタク的な遺伝子は蓮に色濃く受け継がれた。彼の興味の矛先はなかなかマニアックで、最近は機体によって翼に少し違いがあることに気づいた様子で、琴音としては蓮と飛行機談義をできる日が楽しみで仕方ない。

「しゅきよ。でもリンはロケットのほうがもっとしゅき!」

 凜は何事にも好奇心旺盛なタイプ。最近はロケットに夢中だ。スケールの大きいものを好むところがとても彼女らしくて、ほほ笑ましく思っている。

「じゃあ将来は宇宙飛行士かな。知ってるか? パイロットから宇宙飛行士になった人もいるんだぞ」

 黎治の明るさや包容力はふたりを安心させるのだろう。すっかり懐いていて、どこからどう見ても父子そのものだ。

(この調子なら、彼がパパだよと教えてあげられる日も近いかな)
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