ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
「そんなつもりで話したわけじゃないです。そもそも隠していたのは私なんですから」

「なら、俺がすべきことは謝罪じゃなくて感謝だな。ふたりを、俺たちの大切な子どもたちを……いい子に育ててくれてありがとう」

(こんな優しい言葉、不意打ちすぎる)

 あの頃の奮闘に金メダルをもらったような気分になって、思わず涙腺が緩んでしまう。

「ありがとうございます。でも、大変だった記憶より、幸せだった記憶のほうがずっとずっとたくさんあるんです!」

 嵐のような日々だったはずなのに、過ぎてみると日だまりのような温かさだけが琴音のもとに残っている。

 蓮が初めて寝返りに成功した瞬間、凜の最初の言葉が『ママ』だったこと、ふたりに挟まれて眠る夜。

「私だけが独占しちゃって、黎治さんには本当に申し訳ないと思ってます」
「いいよ。これから、取り戻すつもりだから」

 穏やかで優しい空気がふたりを包む。家族、そんな単語が琴音の脳裏にポンと浮かぶ。

(自惚れていいのかな? これから、黎治さんとふたりと……家族になっていけるって)

「それじゃあ、おやすみ。戸締りに気をつけて」
「はい」

 夜十時頃、玄関の前で彼を見送る。「あ」となにか思い出したように、彼が声をあげる。

「琴音、近いうちに俺の友人を交えて一緒に食事をしないか?」
「黎治さんのお友達?」
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