ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
「あぁ。例の、社長令嬢と結婚した同期の和志だ。子どもの件は秘密にしているが、琴音との別れに事情があったという話をしたら責任を感じたらしくてな」

 黎治の同期である和志と、その妻である桜がおわびに琴音に食事をごちそうしたいと言ってくれているらしい。

「えぇ? ふたりにはなんの責任もありませんよ。気持ちは嬉しいですけど」
「なら、ワリカンでただの食事会ということにしよう。それでどうだ?」
「それなら、ぜひ!」

 琴音はあまり社交的ではないが、黎治が親しくしている人ならきっと大丈夫。そう思えた。

「俺は蓮と凜も一緒に連れて行きたいと思うんだが、彼らにはふたりの存在を知らせても構わないか?」
「職場であまり公にされるのは恥ずかしいですが、おふたりだけなら私は構わないですよ」

 恥ずかしい……というより、シングルマザーの琴音の子の父親が黎治だと知られたら、きっと騒ぎになるだろう。自分はいいが、黎治の仕事の迷惑になるのが心配だった。

「了解。ふたりとも、口は堅いから大丈夫だ」

 日程はまた相談しよう、そう言って彼は帰っていった。

(黎治さんの友人夫妻と食事会か)

 彼が自分と子どもたちのことを隠さず、堂々と紹介してくれるつもりでいることが嬉しい。自惚れがどんどん加速していってしまいそうだ。
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