ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
決められた時間ちょうど、向こうからBBL航空の濃紺の制服に身を包んだパイロットがやってくる。
とても背が高くで、身体つきもがっしりとしていた。パイロットは職業柄、身体を鍛えておく必要があるためか、スタイルのいい人が多いのだ。
青空を背に歩いてくるパイロットの姿は、まるで映画のワンシーンのよう。
彼の全身が機体の影に入る。これまで逆光で見えづらかった顔がはっきりと目視できた。
「――え?」
思わずまぬけな声が出る。琴音は彼を凝視したまま、固まってしまった。
(う、嘘でしょう?)
この精悍な顔立ち……間違いなく、琴音が人生でただひとりだけ恋をした相手、永瀬黎治だった。
最後に会ったのは三年前。彼はイギリスの航空会社との交換出向という形で、ロンドンに旅立ったはずだったが……ここにいるということはBBL航空に戻ってきたのだろうか。
琴音は彼ジャケットの袖口に目を留めた。
(金ラインが四本……機長になったのね)
別れたときは副操縦士だったので昇格したのだろう。現在、彼は三十四歳のはずだから、かなりのスピード出世といえる。 心の底から大好きだった人、そして最愛の双子の父親。もう二度と会うことはないと思っていたのに……。
(どうしよう、どうしたら……いや、落ち着いて。今は仕事中でしょう)
とても背が高くで、身体つきもがっしりとしていた。パイロットは職業柄、身体を鍛えておく必要があるためか、スタイルのいい人が多いのだ。
青空を背に歩いてくるパイロットの姿は、まるで映画のワンシーンのよう。
彼の全身が機体の影に入る。これまで逆光で見えづらかった顔がはっきりと目視できた。
「――え?」
思わずまぬけな声が出る。琴音は彼を凝視したまま、固まってしまった。
(う、嘘でしょう?)
この精悍な顔立ち……間違いなく、琴音が人生でただひとりだけ恋をした相手、永瀬黎治だった。
最後に会ったのは三年前。彼はイギリスの航空会社との交換出向という形で、ロンドンに旅立ったはずだったが……ここにいるということはBBL航空に戻ってきたのだろうか。
琴音は彼ジャケットの袖口に目を留めた。
(金ラインが四本……機長になったのね)
別れたときは副操縦士だったので昇格したのだろう。現在、彼は三十四歳のはずだから、かなりのスピード出世といえる。 心の底から大好きだった人、そして最愛の双子の父親。もう二度と会うことはないと思っていたのに……。
(どうしよう、どうしたら……いや、落ち着いて。今は仕事中でしょう)