ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
 琴音はぺこりと頭をさげてから、準備していた手土産をふたりに渡す。話題の店のフルーツ大福だ。

「わぁ、嬉しい。このあと、みんなで食べましょう」
「とりあえず、なかに入ってよ」

 和志に促されて、琴音たちは門をくぐる。緑があふれる庭には白いブランコがあって、見つけた双子は大興奮だ。

「きゃ~」
「しゅごい!」

 そんなふたりに桜が優しくほほ笑みかけてくれる。

「いっぱい遊んでいってね~」
「リビングから中庭に出られるんだ。だから子どもの様子を見守りながら、大人はゆっくりお茶ができるよ」

 和志の言葉を聞いた黎治が琴音に耳打ちする。

「素晴らしい造りの庭だな」
「ですね! 羨ましすぎます」

 黎治はクスリと笑って、小さくつぶやく。

「俺も一軒家が欲しくなってきた。琴音と蓮と凜と、一緒に暮らせたら楽しいだろうな」

 琴音の胸がドキンと大きく跳ねる。子どもたちへの彼の愛情はしっかりと感じていたものの、そんな将来まで思い描いてくれていたとは知らなかったから。

(それに、私の名前まで……)

 いつか四人で家族になれたら。黎治も同じ気持ちでいてくれるのだろうか。

 幸福な未来の予感に琴音の胸がうち震える。

(どうしよう。三年前より、もっともっと黎治さんを好きになっていく)

 シャンパンで乾杯し、みんなで桜の手料理を楽しむ。
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