ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
「あはは。桜は……ちょっと、いや、だいぶ男の趣味が変わっててさ」
「そんなことない。最高にいい趣味をしてると思うぞ」

 きっぱりと言う黎治に、琴音もうなずいた。世間一般で言うイケメンとは少しタイプは異なるけれど、和志がとてもかっこいい男性であることは少し話しただけの琴音にもよくわかった。桜が夢中になるのも納得だ。

 和志は照れた様子で後頭部をかきながら、口を開く。

「でも、そのせいでふたりにはとんでもない迷惑をかけちゃったし。本当、ごめんな」
「和志と桜さんのせいじゃないだろ」
「……しいて言うなら、早とちりなうちのお父さんのせいだと思うわ」

 桜がかわいらしく唇をとがらせる。

 桜の結婚相手は黎治。そんな噂が流れてしまった理由を、ふたりが説明してくれる。

 和志と出会ったパーティーのあと、桜が自分の父に『素敵なパイロットに一目惚れしてしまった』という話をしたそうだ。

「あのパーティー、僕は黎治と一緒に参加してたんだ。桜が『信じられないくらい、イケメンのパイロット』って言うから社長は当然……黎治のことだと思ってさ」

 桜は小首をかしげて、ため息をつく。

「うちのお父さん、昔からちょっと美意識が人とズレてるのよね。あっ、ごめんさい。黎治さんを悪く言うつもりはないんだけど……」
「え~と。何度も言ってるけど、ズレてるのは桜のほうだからね?」
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