高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
 黎治が口にした雑誌は琴音もよく知っていた。飛行機マニアにとってはバイブルのような存在だから。

 そこの記者から、黎治に取材の申し込みがあったそうだ。イギリスのエアラインへの出向など、彼のキャリアに注目しての依頼のようだ。

「わぁ、楽しみですね。発売されたら、絶対に読みます!」
「取材自体が来月って話だから、発売はまだまだ先だよ」

 食事を終えると、桜は立ちあがり蓮と凜に声をかけた。

「お庭のブランコで遊んでみる?」
「うん!」
「あそぶ~」

 部屋のなかでいい子にしているのに少々退屈していたのだろう。ふたりは掃き出し窓の向こうに見える白いブランコに目を輝かせた。

「よし、じゃあ上着を着てお外に出ようか!」

 和志がそう言って、ふたりと手を繋いでくれる。

「あっ、すみません。私も一緒に」

 琴音は慌てて腰を浮かせようとしたが、黎治に引き止められる。

「俺がふたりに頼んであったんだ。少しだけ、琴音とふたりで話す時間が欲しいと」
「え?」

 和志がちょっと不器用なウインクつきで言う。

「隣が僕の書斎だから。そっちで話してくるといいよ」

 和志の書斎には、重厚なデスクセットと背の高い本棚が置かれていた。航空関係の本がたくさん並んでいる。

「あ、あの……」

 思いがけず訪れた黎治とふたりきりの時間に、琴音は少し緊張する。

(話ってなんだろう?)
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