ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
 本棚を背にして、ふたり並んで立つ。肩が彼の二の腕の辺りに触れていることを、やけに意識してしまう。

「気を使いすぎて、疲れていたりしないか?」

 琴音を気遣うように、彼が顔をのぞき込んでくる。

「いえ、全然。私は社交性ゼロなのでこういう場が得意とはいえないのですが、和志さんと桜さんはすごく話しやすいです!」

 ふたりともマイペースで、そういう点は琴音と少し似ているからだろうか。まったく気疲れすることなく、楽しく過ごせていた。
 琴音の答えに黎治は安堵の表情を浮かべる。

「そうか、よかった! 大切な友人と琴音が仲良くなってくれるのはやっぱり嬉しいな」

 彼のその感情は琴音にも覚えがあった。

「私も……蓮と凜が黎治さんを『好き』って言ってくれて、とても嬉しく思いました」
「ふたり、俺のこと好きだって?」

 わかりやすくデレデレした表情になる彼がなんだかかわいい。琴音はふふっと顔をほころばせる。

「はい。正直、ちょっと嫉妬しちゃうくらいです」

 最近のふたりは彼が不在のときも、黎治の話ばかりするのだ。

「――琴音は?」
「え?」

 ふと顔をあげると、びっくりするほど近い位置に黎治の美しい瞳が迫っていた。

 妖艶な笑みを浮かべて、彼は大きな手で琴音の耳の辺りをくすぐる。

「琴音も、俺を好きだと思ってくれるか?」
「えっと、その、あの」
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