ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
四 暗雲、垂れ込む
 四 暗雲、垂れ込む


 それからまた日々が流れ、新年を迎えた。

 黎治とは、とてもよい関係を築けていると思う。いいことも、そうでないことも、きちんと言葉にして彼に伝えているし、黎治はそのすべてを受け止めてくれる。

(『私なんて』はもう禁句。私は蓮と凜のママで、黎治さんのパートナーなんだから。そんな言葉は三人に失礼だもの)

 かつてより成長した今の自分、悪くないなと思えている。

 蓮と凜にも、きちんと彼が父親であることを話した。もちろん、幼いふたりは〝父親〟の意味を正確に理解できているわけではないだろう。だけど、黎治がそばにいてくれることでますます笑顔が増えた。

 四人でしたクリスマスパーティーの夜。

 琴音がなにか言ったわけでもないのに、ごく自然にふたりが黎治を『パパ』と呼んだ。

 あのときの黎治の涙には……琴音もグッときた。自分たちは、きっと家族になれる。そう確信できた瞬間だった。

「どうした? ニヤニヤして」

 黎治が琴音の顔をのぞく。

「いえ、すごく幸せだなと思って」
「俺も、同じことを思ってた」

 彼の大きな手が琴音の手を優しく包み込んでくれる。

 今日は、再会してから初めてのふたりきりのデートだ。

 双子もだいぶ彼に慣れたので、そろそろ次のステップ――同居に進もうと考えている。

 たまに遊びに来てもらうぶんには問題ないが、四人で暮らすには琴音のマンションは手狭すぎる。その点、黎治のマンションなら十分な広さがある。なので琴音たちが彼のマンションに引っ越すことに決めた。

「いずれは一軒家もいいよな」
「そうですね。男女の双子だから、いつまでも一緒の部屋ってわけにはいかないでしょうし」
「じゃあ家具は先のことも考えて選ぼう」
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