高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
 人気メニューだと思っていたのは、自分だけだったようだ。黎治はクスクスと笑って続ける。

「今から行く店は激辛料理で有名みたいだから、存分に満喫して。子どもがいると、癖の強いメニューはなかなか食べられないもんな」
「そう! 本当にそうなんですよ~。エスニック料理とかも好きですけど、最近はめっきり食べる機会がなくて……」

 自炊のメニューはもちろんのこと、たまの外食も子どもとシェアできるもの……を基準に選ぶので自分の好みはほとんど反映できない。そんな、育児中のちょっとした苦労を理解して、すくいあげてもらえたようですごく嬉しい。

「さすが黎治さん! モテモテな理由がよくわかります」

 琴音は尊敬の眼差しを彼に注ぐ。黎治がふいに立ち止まり、琴音の正面に立った。

「黎治さん?」

 彼の温かい手が琴音の頬に触れる。

「せっかく褒めてもらったのに幻滅させるかもしれないが……あれこれ考えて店を選ぶのは相手が琴音だからだ。誰にでも平等に頭を悩ますわけじゃない」

(私……だから?)

 胸がトクンと小さく跳ねる。

「幻滅じゃなくて……逆ですよ。そんなこと言われたら、嬉しくて舞いあがってしまう」
「別に構わないんじゃないか。今日はふたりきりで、デートなんだから」

 背中に羽が生えたみたいに、足取りも軽くなる。
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