ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
 甘い時間を過ごしたあとは、双子のお迎えのために黎治の運転で姉の家へ向かう。

 ドライブ中の何気ない会話も楽しくて、琴音の声はいつもよりずっと弾んでいる。

「わぁ。例の雑誌の取材、始まったんですね!」
「インタビューに答える程度だと聞いていたんだが、思っていた以上に記者に張りつかれて……正直、仕事がしづらい」

 なんでもスマートにこなす彼だが、実は写真を撮られるのはあまり得意ではないらしい。いつになく困った顔をしている黎治がなんだかかわいく見えた。琴音は口元をほころばせて、彼を励ます。

「でも私は黎治さんの記事、すごく楽しみです。新人のパイロットさんたちの道しるべにもなると思いますし」
「琴音がそう言ってくれるなら、まぁがんばって耐えてみるか」

 数日後。黎治のマンションに引っ越す日程も決まり、いよいよ新生活に向けて動き出していた。

(電気やガスの連絡と、会社への報告はもう少しあとでいいよね)

 黎治との交際、正式に結婚を決めてからはとくに隠していない。

『結婚報告でいきなり公にするより、少しずつ周知していくほうがかえって騒がれなくていいと思う』

 黎治がそんなふうに提案して、琴音もそれを受け入れた。

 なので最近は仕事終わりに待ち合わせをしたり、双子も一緒に四人で空港内を歩いたりもしている。
< 84 / 121 >

この作品をシェア

pagetop