高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
(すでに多少の噂にはなっているから、もうびっくりされることもないかな)

 黎治と琴音の関係、もちろんすごく驚かれたようだったが……思っていたほどの騒ぎにはなっていない。

 現代人の興味は移ろいやすいから、新しい話題が出るとともに忘れられていくのだろう。

「じゃあ、いってきます!」
「バイバ~イ」
「きをちゅけて!」

 子どもたちを保育園に預けて、今日も仕事に向かう。プライベートが充実していると、不思議と仕事もうまくいくような気がする。

 ウキウキで歩いていた琴音は、少し先に背の高い黎治の背中を見つけた。肩に四本ラインの入ったパイロットの制服に身を包んでいる。

(あ、黎治さんだ!)

 声をかけたいけれど、彼はこれから海外フライトのはず。

(急いでいるかもしれないな)

 そう考えてためらっている間に、誰かが彼を追いかけてきた。

 綺麗に巻かれたロングヘア、オフホワイトのツイードスーツ、高めヒールのパンプス。仕事のできる女性といった雰囲気の後ろ姿だった。

(CAさんかな?)

 そう思ったけれど、彼女たちは通勤時の私服はわりとカジュアルだ。スーツを着ているイメージはあまりない。

(BBL航空本社の人か……あっ、もしかして例の記者さん?)
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