高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
 彼女は一生懸命、黎治に話しかけながらなにかメモを取っている様子だった。琴音の推測はきっと正解だろう。

 取材中なら、なおさら邪魔はできないと声をかけるのは諦めたが……。

(記者さん、女性なんだ……)

 胸にモヤッとしたものが広がったことに、琴音は自分でも驚いてしまった。

(黎治さんのこんなに大事にしてもらっているのに、ヤキモチまで焼くなんて贅沢すぎる。そもそも雑誌の取材は仕事だもの!)

 自分の頬を軽く叩き、気持ちを切り替えて更衣室へと歩き出す。

 一日の仕事を終えた琴音は双子の待つ保育園へと歩いていた。

 今日、黎治はフライトでパリへ向かった。

 海外フライトの場合、韓国や中国などの近場の場合は現地に一泊、欧米の場合は二泊四日のスケジュールになることが多いそうだ。

 なので、今回は日本に戻ってくるのは四日後。

(蓮と凜が寂しがるだろうな。どんな手でなだめようか)

 頭を悩ませながら歩いていたところ、ふと視線を感じて琴音は顔をあげた。

 少し先に女性が立っていた。まるで琴音を待ち伏せしていたかのように、こちらを見ている。

(あの白いスーツ、今朝黎治さんと一緒にいた人? ――え?)

 記者らしき女性に間違いはない。だけど、琴音が目を丸くしたのは別の理由からだ。

 彼女の顔に見覚えがある。今朝ではなく……もっと古い記憶。

「やだ~。やっぱり、琴音ちゃんなの?」
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