ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
「そんなわけでやる気を失ってたんだけどさ~、でも今はね、この異動は運命だったって思ってる」

 語尾にハートマークがつきそうな甘い声だ。

「えっと、よくわからないけどモチベーションがあがったのならなによりだね」

 適当な相づちを打つ琴音に、沙里はにんまりと笑ってみせる。

「取材対象のパイロット! イケメンで、スマートで最高なの。しかもパイロットって高収入なんだってね」

 心臓がスッと冷えた。なぜ彼女が自分に会いに来たのか、その理由がようやくわかったから。

「永瀬黎治さん。きっと彼が私の運命の相手だわ。取材が終わる前にモノにしておかなきゃと思ったんだけど……大事な女性がいるとかなんとかで、かわされちゃって」

 その言葉にホッとしてしまう、自分の自信のなさが悲しい。

「周囲の人にリサーチしたら、彼の大事な女性は整備士らしいって聞いたのよ。おまけに聞いた名前が……池田琴音。まさかとは思ったけど本当に琴音ちゃんだったとはね」

 彼女は琴音の顔をのぞき、ニヤリと不敵に笑ってみせた。

「悪いけど、奪っていい? ほら、琴音ちゃんがCAにでもなったっていうなら……ちょっと負けるかもしれないけど。整備士なら、まぁ楽勝かな~って」

 彼女は内面もあの頃のままだ。勝手に人をランク付けして、値踏みして、馬鹿にする。
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