ズルくて甘い包囲網~高嶺のパイロットはママと双子を愛で倒したい~
「BBL航空のメインバンクがどこだか知っている? 調べてみたらいいわ」

(BBLのメインバンク? なんの話?)

 ふっと口元をゆがめて、彼女は笑った。

「琴音ちゃんはさぁ、昔みたいに……隅っこでうつむいているのがお似合いよ。私と張り合おうなんて、馬鹿なことは考えないほうがいいわ」
 細い手首に巻かれた高級そうなドレスウォッチに視線を落として、沙里は言う。

「ちょうど十分ね。それじゃあ」

 カツカツとヒールを鳴らして、彼女は去っていった。

 その夜。双子を寝かしつけたあとで、琴音はあらためて今日のことを思い返す。

(黎治さんはモテるから、こういう事態を想定していなかったわけじゃない。でも……よりによって沙里ちゃんかぁ)

 琴音はズンと肩を落とす。あの頃よりは強くなったつもりでいた。

 でも実際に沙里に会うと、完治していたはずの古傷が鈍い痛みを訴えてくる。「傷口はまだ、ここにあるよ」とでも言いたげに。

「情けないなぁ」

 自分はいまだに彼女を怖れている。それがみじめで、悔しかった。

 勇気を出して、彼女の言っていた『BBL航空のメインバンク』の件を調べてみる。スマホでHPを検索すると、すぐにメインバンクの名前が出てきた。東京に住む者なら誰もがその名を知っているメガバンクだ。

(この銀行と黎治さんの結婚にどういう関係が?)

 さっぱりわからないまま、今度は銀行のほうのHPをのぞく。
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