高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
(頭取……櫻木太一郎(さくらぎたいちろう)さん。あっ!)

 彼女の名字は櫻木だ、櫻木沙里。

『沙里ちゃんのパパって、大きな銀行の偉い人なんだって~。支店長って言うらしいよ』
『いずれは東京のオシャレな街に帰るんだって』

 同級生から聞いた彼女の家に関する噂話も同時に思い出す。

(そうだ。沙里ちゃんのお父さまはこの銀行の偉い人で……今は頭取にまでなったということ?)

 沙里の自信の根拠がようやく理解できた。

 どこの企業にとってもメインバンクとの関係は大切なもの。

 たとえば、沙里の父がBBL航空の社長に縁談を進言したりした場合、むげに断ることは難しいんじゃないだろうか。

(どうしよう。黎治さんに報告しておいたほうがいいかな?)

 琴音は手にしていたスマホで彼の番号を呼び出すが、黎治は海外フライトの最中。

 すぐに繋がるかはわからないし、そもそも長時間のフライトは神経を消耗する。余計な情報を耳に入れるべきではないだろう。

(帰ってきてから、相談してみよう。そうだ、会社への報告と入籍の予定を早めたらいいのかもしれない)

 姑息な作戦かもしれないが、沙里の父もBBL航空の社長も、さすがに既婚者に縁談は持ちかけはしないだろう。

「うん、そうだよね。BBL航空の社長は桜さんのお父さまだもん。きっと、非情な人ではないはず」
< 91 / 121 >

この作品をシェア

pagetop