高嶺のパイロットは、秘密の双子とママを愛で倒す~地味な私が本命だなんてホントですか?~
 乙葉はいつも、こんなふうにさりげなく琴音を気遣ってくれる。病院やヘアサロン、子連れではどうしても行きにくい場所はたくさんあって、シングルだとそこが一番つらいところだから彼女のサポートは本当にありがたい。

「いつもありがとう、お姉ちゃん。じゃあお言葉に甘えて、ちょっと銀行に行ってきてもいいかな?」
「もちろん。ついでにお洋服とかも見てきていいよ~」

 無事に用事を済ませて、琴音は銀行を出る。

(銀行って子連れだとどうしても気を使っちゃうから、助かったな)

 ちょっとした書類をもらうだけだったのだが、双子を連れていると入りづらくて先延ばしになっていたのだ。

 華やかな銀座の街をひとりで歩くのも、いいリフレッシュになる。

(お洋服かぁ。節約、節約で自分の服なんてまったく興味もなかったけど)

 ふと沙里の華やかなファッションを思い出す。対抗意識とまではいかないけれど……。

(私も、たまにはがんばってみようかな)

 珍しくそんなことを思って、街ゆく女性たちの服装を観察する。

(あの人のコート、いいなぁ)

 ひとりの女性の後ろ姿に琴音は目を留める。絶妙なグレージュカラーの上質そうなウールコート。シンプルだけど女性らしさもあって、とても素敵だ。

 コートの彼女が隣を歩く男性に話しかける。そのとき、ちらりと見えた横顔に琴音は目を丸くする。

(沙里ちゃん?)
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