男性不信のお姫様と女性不信の王子様はカボチャ姫を愛す

私が言うのも何ですが……様子が変ですよ


 
 城に帰って来たけど……スカイミラー湖に行ってから、どうもアレクシス王子の様子が変な気がするわ。
「お帰りなさいませ、エレノア様」
「ただいま、エマ。お母様に城を出てたことは気づかれていないかしら?」
「ローズ様は、ご公務でまだ帰られておられませんので大丈夫です」
「それは良かった。アレクシス王子、もしお疲れでなければ今からでも庭園でお茶をご一緒しませんか?」
「私は全然構いませんよ!! まだ話し足りないくらいでしたので……」
ーー無理して言ってくれてるのかしら?
それも仕方ないわよね。
いくら幻滅してても隣国の姫を無下には出来ないもの……なんてお気の毒なの。
でも、おかげで私の作戦は完璧に成功よ!!
これでもう破談だもの!!
「それではアレクシス王子、庭園の方へとご案内します」
「はい、ありがとうございます」
ーーもう心置きなくアレクシス王子とお茶できるわね。
縁談を固められては困るから二人っきりでお茶する前に城外へ出て好き勝手しておいて正解だったわ!!
幻滅している私とお茶を付き合ってもらうのはアレクシス王子には酷だけど……。
お母様に二人っきりでお茶をしてないことがバレたら大変だからね。

⭐︎

「アレクシス王子、こちらですよ」
「…… これは素晴らしい庭園ですね。目を見張る美しさです」
「ありがとうございます。ここは私の癒しの場所なのですよ。この庭園で飲むお茶といただくスイーツは格別ですのっ」
「ハハ、そうでしょうね」
ーーこの庭園は私の自慢の場所。
ウェンスティール国は花の国とも言われてるくらいですもの……こんなに美しい庭園は他にはないのではないかしら。
花と緑にあふれ、風が吹けば花の優しい香りが辺りを漂い。
この庭園の自然と香りに私はいつも癒されるのよね。
「あちらに咲いている青色の花…… とても綺麗ですね」
「この青い花はブルーベルという名で、代々王家のシンボル花として大切に育てられているのですよ。この王城でしか見ることも、咲かすこともできない大変貴重な花なのです」
「…… そうでしたか」
「アレクシス王子はこんなに沢山の花が咲くこの庭園でどうしてこの花が気になられたのですか?」
「青は…… 私も好きな色ですが…… 母上の好きな色でもありますので……」
「アレクシス王子は王妃殿下を本当に大切に思ってらっしゃるのですね」
「…… 母上は私を産むのに大変苦労をされたのです。一時は生死を彷徨うほどで…… そのせいで今でもお体がご丈夫ではないので。城外へ出ることも少なく、よく気晴らしに城の庭園の花を愛でて過ごされています。美しい花を見ると母上の顔がつい浮かんでしまいますね」
ーーきっとブルーベルを王妃殿下に見せてあげたいと思っておられたのね。
「そうでしたか…… アレクシス王子はお優しいですね」
「…… いえ、母上がそうなったのは私のせいですから……」
ーーそんな哀しそうな顔をされて……アレクシス王子は何も悪くないのですよ。
「そんな風に思われるのは王妃殿下も望まれませんよ!! きっと異国の地に来ても自分のことを思う優しい子の母で幸せだと思われるはずです!!」
「………。」
な、なんか私は余計なことを言ってしまったのかしら?
とても驚いた顔をされているけど……。
「そうかぁ…… そうなのかぁ。エレノア…… ありがとう。ありがとう、エレノア!!」
ーーえっ!?
ど、どうして……急に両手を力強く握られてしまっているのかしら?
突然どうしたの!?
「…… やっと見つけた」
んっ……?
今……何か見つけたって言ったわよね?
何を見つけたの?
ブルーベルのこと……?
なんだか意味不明よ、この状況……。
やっぱり変よね……アレクシス王子。
私に幻滅し過ぎておかしくなってるのかしら?

ーー私が言うのもなんですが……様子が変ですよ!!

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