男性不信のお姫様と女性不信の王子様はカボチャ姫を愛す
今宵満月を見ながら……
今日のお昼は食べ過ぎてしまったわね……。
おまけに庭園でもエマがローズティーのお供に焼き菓子も運んできてくれたから、それまで平らげてしまったし。
というより……アレクシス王子の様子が変だから食べて気を紛らわせるしかなかったのよね。
おかげでお腹パンパンなんだけど……。
でも、もうすぐディナーの時間だわ。
もちろん気合いで食べるわよーー!!
⭐︎
「アレクシス王子、エレノアとは庭園でゆっくり過ごせましたでしょうか?」
早速お母様の探りが入ったわね……。
よかった、ちゃんとお茶しといて!!
「はい。エレノア姫と素晴らしい庭園でとても楽しい時間を過ごさせていただきました!!」
「それは良かったです。二人でゆっくり話すことができて。明日の朝にはもうカルテア国へとお帰りになられるのが残念ですわ……」
「私もウェンスティール国を去るのは寂しいです」
ーー何故こっちを見ながら言うの?
「我が妹はかなり活発ですから、今日一日アレクシス王子が振り回されてやしないか心配でしたよっ!!」
ーーお兄様……なんと勘の鋭いこと!!
「いえ、とても有意義な一日でした」
「それは良かった。我が娘はなかなか気難しいとこがあるのでねーー」
えっ!?
聞きづてならないですわね!!
お父様、私のどこが気難しいのです!?
「いえ、エレノア姫はとても心の温かい方ですよ」
「ほーーそれは良かった!! アレクシスにエレノアを気に入っていただけたようで」
お父様、これは社交辞令です!!
「…… はい、そうですね」
「それは本当に良かったではないかっ!! エレノア」
ーー本当は様子が変になるほどに私に幻滅されておられるのですよ!!
「エレノア姫、食事を終えたら庭園で少し一緒に歩きませんか?」
「あっ、はい……」
どうしたのかしら?
⭐︎
ディナータイムも終わって、アレクシス王子と一緒に庭園まで歩いてきたけど……突然どうしたのかしら?
「アレクシス王子…… どうしてまた庭園に?」
「…… もう一度帰る前にこの美しい庭園にエレノアと来たかったんだ」
「そうなのですか……」
「今宵は月が綺麗ですね…… この素晴らしい庭園から眺める月は格別に綺麗だ」
「そうですね…… 今宵は満月ですし…… 今日のお昼にいただいたパンケーキを思い出しますわね」
「ハッハハハーーこんなに綺麗な満月を見て思うことがパンケーキ? エレノアは本当に面白いなーー」
「そ、そうですか……」
なんだか王子のツボにハマってしまったようね。
「あっそうだ、エレノアに渡したい物があるから目を閉じて右手を出して……」
「えっ、はい…… 目を閉じて右手を出せばいいのですね……」
ーーなんなのかしら……?
んっ……私の右の手の平に王子が何かを置いたようね。
何かしら……?
「エレノア、目を開けて」
「あっ!! これはロイさんの店に置いてあった馬の置き物……」
「その馬の置き物を手に取っていたから気に入ってるのかと思ったんだ……。だからエレノアがお昼の買い出しに行ってる間にロイさんの店に戻って買ってきたんだよ」
「ええ、ベルに似ているようで…… とても気に入ってました!! いいのですか貰って?」
「もちろん!! 楽しい時間を一緒に過ごさせてもらったお礼だよ」
「…… とても嬉しいです!! ありがとうございます」
「いいんだよ。それに私も…… ほらっ、スカイ似の鳥を買ったんだ!!」
「あっ、ほんとですね!! このガラス細工の鳥に似ていると仰っておられましたものね」
「私も気に入ったし…… それに何より今日の二人の思い出の記念にもなると思ったんだ」
「そ、そうですね…… ありがとうございます」
「私こそ楽しい一日だったよ。ありがとうエレノア!!」
「い、いえ……」
ーーなんか調子狂うわね……。