男性不信のお姫様と女性不信の王子様はカボチャ姫を愛す

さようなら王子様


ーーアレクシス王子がカルテア国へとお帰りになる朝がきた。

「滞在期間中は大変良くしていただきありがとうございました」 

「いやいや、まだまだ居てもらいたいくらいだぞっ!!」

「嬉しいお言葉ありがとうございます。国王陛下」

「寂しくなりますわね。帰路の際はお気をつけ下さいね」

「お気遣いありがとうございます。王妃殿下」

どうしたのかしら……お兄様、アレクシス王子に近づいていって……?

「アレクシス王子、次にウェンスティール国へと来られる時には是非私の愛馬ブルーノにお乗り下さいねっ」

小さな声でそう言ったお兄様はお父様とお母様にバレないように軽く目配せした。

「ハハハーーはい、ありがとうございます」

ギョッ!!
お兄様にはベルとブルーノに乗って城外へ出ていたことがバレてる……。

「エレノア姫、お会い出来て良かったです。楽しい時間をありがとうございます」

「いえ、私も楽しく過ごせました。お気をつけてお帰り下さい。それと…… これをどうぞ……」

「これは…… あの花……」

「はい。押し花の栞にしました。王妃殿下へお持ち帰り下さい」

ーーブルーベルの花を王妃殿下に見せたかったようだしね。

「こんな大切な花を…… ありがとうございます。母上がお喜びになります!!」

「いえ、喜んでもらえたら嬉しいです。お身体をお労りくださいますようお伝え下さい」

「ありがとう…… エレノア」

そうしてアレクシス王子はウェンスティール国を去っていった……。
なかなか濃いい二日間だったわね。
でも思ってたよりは楽しかったかも……。
ーーアレクシス王子……もうお会いすることもないでしようね。
ちょっぴり寂しい気もするような……しないような……そんな感じだけど。
遠いウェンスティール国の空の下より、あなたのご多幸をお祈りしております!!

ーーさようなら王子様。

私はこれで通常モードに戻りたいと思います。
やれやれ。

⭐︎

 アレクシス王子がカルテア国へと帰られて二週間が経った。
私はというと……すっかり王子との縁談は無いものとし心穏やかに過ごしていた。

「フーーこの庭園で過ごす優雅な午後の一時。エマに入れてもらったローズティーとレオが焼いてくれたパンケーキを食べながら最高の気分だわーー」

「フフフ。エレノア様はいつも美味しそうに食べますね。幸せそうです」

「えぇ、とても幸せよ!! 食べてる時と寝てる時とベルに乗って城を抜け出している時がねっ」

「エレノア様のことをかなり活発なお姫様だとアレクシス王子は思われたのではないですか?」

「エマ…… 活発なお姫様どころじゃないわよ!! 素の私を知って、とーーっても幻滅されて帰って行かれたのよ!!」

「フッハハハーーもう笑わせないで下さいよーー!! エレノア様ったらーー」

「だって本当のことですものーー」

ーーもうそろそろ破談の知らせが届く頃かしらね。
それにしてもこのローズティーは香りがいいわよね。
とてもいい匂いだわーー。

「おーーい、エレノアーー!!」

はーー。
私の優雅な至福の時間にお兄様は一体なんの用なのかしら。

「どうされましたか? お兄様」

「先程カルテア国から知らせが届いたんだよ!!」

「ええ、わかっておりますわ。私の不徳の致すところでございます!!」

「…… エレノアは何を言ってるんだ? カルテア国に私とエレノアが招待されたんだよ」

「へっ!? 何故…… です」

パリーーン、

私は動揺のあまりローズティーの入ったティーカップを持つ手を緩めてしまった。

「エレノア様!! お怪我はございませんか?」

「大丈夫よ。ごめんなさいね、エマ」

「エレノア!! 大丈夫かい?」

心配そうに私に駆け寄るお兄様。
大丈夫じゃないわよっ!!

「どういうことですか?」

「一ヶ月後にカルテア国で行われる舞踏会に招待されたんだよ!!」

なんですってーーっ!!
一体どうなってるの!?
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