男性不信のお姫様と女性不信の王子様はカボチャ姫を愛す

ラブストーリーは突然に③


 結局あの店で一番露出の少ないデザインのドレスを選んだんだけど……。
赤い色のドレスになっちゃったわね。
私には赤いドレスもかなり刺激的な感じがするけど。
こんなにもドレス選びに時間がかかって苦労する事になるとは……。
いつもハンナに任せっきりだったから余計に何を選んでいいのか分からなかったわ。

お兄様なんてあっ、という間に選ばれたというのに。
ーーよく考えてみれば地味なドレスを必死に探しているだなんて……さすが田舎者の姫だわ!!

それにしても何度も試着して体力を使ったせいで、お腹が空いたわねーー。
アレクシスお勧めの海沿いにあるシーフードレストランに来たけど……どのメニューも美味しそうね。

「アレクシス、ここは何がお勧めなんだい?」

「ここはシーフードパエリアが美味しいですよ!!」

ーーなにそれ!?

「…… シーフードパエリア…… 食べたことがないですわね……お兄様?」

「そうだな…… ウェンスティール国では聞いたこともないなっ」

「シーフードの旨みがたっぷりと味わえますよ!!」

「では、そのパエリアというものを頼むとしようではないか!!」

「そうですわね!!」

ーーパエリアってどんな食べ物かしら?

楽しみだわ!!
それにしても……カルテア国の王都はとても活気づいて賑やかね。
色んなお店が並んでいるわ……どこも景観が……やっぱり派手ねっ。

「エレノア、パエリアがきたよ!!」

ーーギョッギョッ!!
こ、こ、これは…… 食べてはいけないものなんじゃ……。

「まっ、真っ黒ですわよ!! アレクシス、なんですか…… この恐ろしい食べ物は……」

「イカ墨のパエリアだよ!!」

「ーーえっ? イカ墨の…… 聞いたことないですわね……」

「エレノア、心配しなくともアレクシスが勧めているのだから大丈夫だ!!」

ーーお兄様はそう言うけど……大丈夫なの……本当に?

「エレノア、美味しいから食べてみて」

まぁアレクシスがそう言うのなら。

「そうですわね……」

お腹も空いてるし……疑う心より空腹に抗えない私がいるわ。
頂きましょう!!
あれっ、、
んーーとっても美味しいじゃない!!

「美味しい!! アレクシス、これとっても美味しいで…… す……」

ハッ!?
た、た、、大変よーーーー!!
アレクシスの口が真っ黒になっているわ!!
お、お、お兄様達の口まで……。
これは……これは……毒よっ!!
毒を盛られたのよーーーー!!

「ど、ど、、どうしよう!! 危険よ、み、みんな急いで吐き出したほうがいいわ!! みんなの口が真っ黒に変色しているの!! お水を…… お水を飲んでーーみんなーー!!」

「エ、エレノア、落ち着いて!! これはイカの墨が口についてしまっているだけだから!!」

「ヘッ……? これイカの…… 墨なの……? ビックリするから食べる前に説明して下さい!! こんなにイカの墨が口につく食べ物だなんて知らないのですから!!」

「エレノア、驚かせてすまなかったね…… ハッハハハーー」

ーー笑いごとではないのよ!!
私一人でバカみたいじゃないのーー!!
でも……なんか……アレクシスの笑顔を見ると……胸が……。

「ブラッドさん、お口についた墨をお拭きしますよ」

「ありがとう。エマ」

「お前達は何をイチャイチャしているんだ!!」 

「イチャイチャなんてしていませんよ!! ジョセフ様」

ーーブラッドとエマ……幸せそうね……。
恋人同士っていいわね。

「私も可愛い妹に拭いてもらうとするかーー」

「何を言っているのです!! お兄様はご自分でなさって!!」

「冷たいな…… 我が妹は。それではアレクシスの口を拭いて差し上げたらどうだ?」

ーーなにを言うのよっ!!
そんな恥ずかしいことしないわよ!!

「エレノア、拭いてもらってもいいかい?」

アレクシスもお兄様の悪ノリに真面目に付き合ってどうするのよ!!

ーーえっ!?
な、なんか……もしかして……拭かれるのを待っているの……今……。

「わ、わかりました。お拭きしますわ……」

「ありがとう。エレノア!!」

コシコシ、、
私は一体何をさせらているのかしら……。
でも……なんかドキドキする?
ドキドキしているわ。
おかしいわね……なぜかしら?
心臓がおかしいわ……?

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