男性不信のお姫様と女性不信の王子様はカボチャ姫を愛す
今から会いに行きます
いよいよ今日はウェンスティール国へと出立する日だ。
「父上、母上、見送りありがとうございます」
「気をつけて行って参れ。良き報告を待っているぞっ!!」
バシッバシッと気合いを入れているおつもりなのか父上が私の肩を強く叩く。
「ウェンスティール国は自然豊かな国で色とりどりの花々が沢山咲き誇っていると聞きました。せっかくの機会ですから自然にも触れて癒されてきなさい」
父上とは対照的に一人息子の肩の荷を軽くしようと優しく微笑んだ母上が言う。
「そうですね。では行って参ります」
私は従者のエドモンドと共に馬車へと乗り込み城を後にした。
⭐︎
馬車に揺られながら果たして女性不信の身でこの縁談は上手くいくのだろうか……そんなことを考えていると、
「アレクシス様!! その青みがかった緑色の瞳はエメラルドの宝石のように人を魅了し惹きつけます!! そして長身なうえに体格のよろしいところは国王陛下に似ておられ、光輝く銀色の髪と端正なお顔立ちは王妃殿下に似ておられます。どこからどう見ても完璧であらせられますよ」
ーーんっ!?
エドモンドは突然何を言っているんだ?
「だから心配なさらずともアレクシス様でしたら他の国の女性達もエレノア姫さえも放ってはおけませんよっ!! ハッハハハーー」
長年私の従者であるエドモンドは私の顔を見れば何を考えているのかお見通しなのだといつも自負するが……今回はハズレだ。
私は自分が気に入られるかなどの心配をしているのではない!!
今まで多くの令嬢達と会う機会があったが自分を好いて欲しいなどと思ったことは一度もない!!
「私が聞いた話ですと…… リチャード国王はかなりの色男だそうで。きっとその娘であらせられるエレノア姫もお美しいことでしょう」
あーーまたエドモンドが的外れなことを言い出している。
相手の容姿なんてどうでもいいのだ。
どうせカボチャにしか見えぬのだから!!
だがここはエドモンドを立てておこう。
「そうだな…… エドモンドがそう言うなら間違いないだろう」
そう言うとエドモンドは満足気な顔をした。
⭐︎
途中、宿で休憩をしながら数日かけようやくカルテア国とウェンスティール国の国境に到着した。
この国境を超えればウェンスティール国の王城にもう間も無く着くであろう。
女性不信を克服できぬまま……。
いよいよ私はカボチャ姫……いや、エレノア姫と対面するのだ。