男性不信のお姫様と女性不信の王子様はカボチャ姫を愛す

エスコートは誰が?


 アレクシスにエスコートされて大広間まで来たけど……もの凄い数の来賓客が来ているわね。
ウェンスティール国と国の大きさが違うから来賓客の多さも倍以上いててもおかしくないものね…。

「エレノアちゃーーん!!」

あっ、キャロライン王妃とハリー国王だわ。

「エレノアちゃん、とっても綺麗だわーー!! その赤いドレス似合っているわよ。やっぱりその薔薇の髪飾りにピッタリだったわね!! ねぇ、ハリー?」

「おーーそうだな、キャロライン。とても綺麗ではないか!! 薔薇の花の妖精のようだっ」

ーーえっ!?
この私が妖精……恥ずかしいわ。

「ありがとうございます」

そういえばお兄様はどこにいるのかしら……。
んっ……あのご令嬢達の人だかり……まさかっ!!

「エレノア、ジョセフはご令嬢達に大人気だぞ!! ジョセフが大広間に姿を現してから、ずっとあんな感じで囲まれておるわ!! ハッハハハーーモテる男も大変であろうなーー」

「あらっハリー、貴方も素敵よ!! ウッフフフ」

「そうか、そうか、私は良い妻をもったなっ!!」

ーーとても仲良しのご夫婦よね……お父様とお母様もこんなに愛し合っている仲の良いご夫婦だったらよかったのに……。

「エレノア、私は来賓客への挨拶回りがあるから、それまで飲み物でも飲んで、どこかでくつろいでいて欲しい。私と一緒にいると疲れてしまうだろうから」

「わかりました。それでは少し夜風にあたりたいのでバルコニーへ行ってきます」

「すまない。後で落ち合おう」

「はい!!」

⭐︎

 「フーーゥ」

夜風が気持ちいいわねーー。
大広間は来賓客でいっぱいだから酸素が足りない気分になるわ。
外の風にあたるとホッとする。
アレクシスも大変ね。

「そこの美しい方!! こんな所でお一人でどうされたのですか?」

ーーんっ!?
美しい方とは誰のことかしら……?
でも……今バルコニーには私しかいないわね。
ーーまさかっ、、
私のことかしら……。

「えっ、私のことですか?」

「そうですよ。ここにはあなたしかいないではないですか!!」

一体どなたなのかしら……?

「少し夜風にあたっていたのですよ」

「こんなにお美しい方がこんな所にいては、もったいないではないですか!! 皆にその美しさを見てもらわないと!!」

お会いしたばかりだけど……お兄様と同じ匂いがするわね……この方。

「いえ、とんでもございませんわ!! 私は田舎者ですし、地味ですので……」

「ハッハハハーー田舎者? 地味? どうしてそう思われるのです? そんなことはございませんよ!! 
現に私はあなたを見て薔薇のように美しい方だと思って声をかけたのですよ」

ーーなんなのかしら?
かなり絡んでくるわね……。
いきなりそんなこと言われてもどう話せばいいのかしら?

「名を名乗るのが遅くなりました。私はアンドレ・ルドルフと申します。よろしければ、あなたのお名前を教えていただけませんか?」

ん……?
アンドレ……聞いたことがあるような……。
あっ!!
もしかして……アレクシスの従兄弟のアンドレ!?
それは大変!!
しっかり挨拶しないとっ!!

「私はエレノア・スティールと申します」

「エレノア・スティール…… もしやあなたはウェンスティール国のエレノア姫ですか?」

「はい……」

「それはそれは、先程はご無礼を失礼いたしました」

「いえ、お気になさらず」

「それではアレクシス王子とはもうご面識があるのですね?」

「はい、ありますよ」

「私はアレクシス王子の従兄弟なんです。アレクシスはこんな美しい姫を一人にしてどこへ行ってしまったんだ……」

「いえいえ、アレクシス王子はお忙しいので……」

「外は冷えてきましたよ。私がエスコートしますから一緒に大広間へと戻りましょう」

わーーエスコート……。
どうしよう……でも断れないわよね。

「ありがとうございます。ではお願いします」

妙なことになってしまったわね。

⭐︎

 アンドレ様にエスコートされて大広間へと戻ってきたけど……。
アレクシスはどこにいるのかしら?
人が多すぎて見つけられないわ。
あっ、、
あそこにいた!!
ーーんっ!?
んっ、ん……?
あのアレクシスのお隣にいる女性は誰かしら?
なんだか距離感がとても近いような気がするわよ。

「エレノア姫、どうなされましたか?」

「あのーーあちらの方にアレクシス王子がいます」

「あっ、本当ですね」

「その…… 隣にいらっしゃる方はどなたでしょうか?」

ーー誰っ!!
誰なのっ!?

「あーー彼女はサイラス公爵家のリタ嬢です。アレクシスとは昔から仲が良いのですよ」

「そうですか……」

そうなのね……あの方がアレクシスの幼馴染のリタ様なのね。
とても大人っぽくて綺麗な方……って、私とドレスの色が被っているじゃないのーー!!
それにそれに……なんてお色気なの!!
たわわなお胸がドレスから半分はみ出しているじゃないのーー!、
私なんて露出の少ないドレスを探すのに必死だったのに……。
それに、それに、あの豊満なお胸が……お胸が……リタ様にガッチリ組まれているアレクシスの腕にくっ付いているような……。
目の錯覚かしら?
よーーく見るのよ……私……。
これは……これは……間違いなくムギュッと、くっ付いている!!
くっ付いているじゃないのーー!!
ハンナが言っていたわ……大抵の男の方は色っぽい女性を好むものなんだと。
そんな色気も豊満なお胸も私にはないもの……。

ーーなんだか……とても胸がチクチクする。

もう頭がパニックよ。
パニック状態だわ!!
幼馴染なんだから気にしなくても大丈夫よね?
お姉さんのような存在なんですもの。

「…… エレノア姫? さっきからずっと黙っておられますが…… 大丈夫ですか?」

パニック状態で意識が飛んでいたわっ!!

「だ、大丈夫です……」

何故かしら……気にしなくてもいいはずなのに、リタ様と自分を比較してしまって居た堪れないわ。
この場から今すぐ姿を消したい気分よ。

「アレクシスーー!! ここだっ!!」

ゲッ!!
なんで呼ぶのよーー。
ハッ、、
アレクシスが私達に気づいたみたい。
どうしよう、どうしよう……。
リタ様と一緒にこっちへ来るわ。
二人のくっ付きっぷりが気になってしまって、どんな顔をすればいいのか分からない。

「エレノア、どうしてアンドレと?」

ーーなんてことっ!!
リタ様は近くで見ると本当に綺麗な方だわ。
子供っぽい私と違って大人っぽくて……。
そしてこのお色気っ!!
眩しい……眩しすぎる!!
悲しいけど……食い気だけで生きてきた私とは大違いだわ。

「…… アンドレ様にバルコニーで声をかけていただき、大広間まで案内していただいたのです」

「おいおい、血相かいて来たかと思えば…… 久方ぶりに会った従兄弟は無視かい?」

「アンドレ、エレノアは私がエスコートするから!!」

「だが、今アレクシスがエスコートしているのはリタ嬢ではないか!!」

「これは違う!! エスコートしていた訳ではない!!」

ーー仲良しの幼馴染をエスコートしていても何も深い意味はないわよね……ないわよ……ないはずっ!!

「なにをそんなにムキになっているんだ? アレクシスは……」

「………。」

ーーなんか……変な雰囲気ね……。

「もう、アレクシスがいつまでたっても私のことを紹介してくださらないので自分でいたしますわ。わたくしはアレクシスの幼馴染のリタ・サイラスと申します。どうぞお見知りおき下さい」

うわーーリタ様の赤い瞳はルビーの宝石のように美しいわね。
とても凛としていて……やっぱり色っぽくて……大人っぽくて……綺麗な方……。

「リタ様、お初にお目にかかります。私はエレノア・スティールと申します。どうぞ私のこともお見知りおき下さい」

「こちらこそ宜しくお願いいたしますわ」

無事に挨拶はすませたけど。
なんだか……リタ様……すごく私を見ている。
子供っぽいて思われているのかしら?
じっくりと見定められているような……。
どうしてかしら?
きっと気のせいよね?
だってリタ様はアレクシスの仲良しの幼馴染で姉のような人なのよ。
きっと仲良くなれるはずだわ。



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