男性不信のお姫様と女性不信の王子様はカボチャ姫を愛す
王子様とリタ
ミハエル伯爵は話が長い!!
エレノアのもとへ戻るのが遅くなってしまった。
「アレクシス、エレノア姫とはどういった関係なんだ?」
「それは…… 何故そんなことを聞くんだ?」
「いや、エレノア姫は魅力的な方だと思ったからだ」
「エレノアはダメだっ!! エレノアは私の…… 私の…… 大切な人なんだ」
ーー絶対に誰にもエレノアを渡すものかっ!!
「…… アレクシスにはリタ嬢がいるではないか? 先程もあんなに密着していたであろう」
「ちがうっ!! あれはリタが無理矢理に腕を組んできたんだ!! リタにも放してくれと言ったが放してくれなかったんだ…… 何度も振り解こうとした」
「だが…… 先程の二人を見ればエレノア姫は二人を特別な仲だと思うのではないか?」
ーー特別な仲……私とリタが……そう見えていたのか……違うっ!!違うんだ!!
エレノア……エレノア……どこにいるんだ……。
エレノアッ!!
「あっ、あそこにリタ嬢がいるようだが…… エレノア姫と一緒ではなさそうだな。アレクシスが一人にするから誰かに誘われてどこかへ行ってしまったのではないか?」
「…… リタに聞いてくる」
エレノア……どうして待っていてくれなかったんだ。
いや一人にしてしまった私が悪い。
誰か他の奴と一緒にいるのか?
私は急いでリタに駆け寄った。
「リタッ、エレノアは…… エレノアがどこにいるのか知らないか?」
「あーーエレノア様でしたらご体調が優れないらしくお部屋へと戻られましたわよ」
エレノア……。
「どこへ行くの!! アレクシスッ!!」
エレノアのもとへと走り出そうと背を向けた私の腕をリタが強く掴み引き止めた。
「エレノアのもとへ行くに決まっているだろう。手を放してくれっ!!」
「ダメよ!! エレノア様にはちゃんと私が話しておきましたわ。私とアレクシスのことを……」
ーー私とリタのこと……?
「なにを…… 何を話したんだっ!!」
「私達は幼少の頃からずっと特別な関係だってこと……。そしてアレクシスの隣にいるべきなのは私だということよ!!」
「リタ…… 君はどこまで勝手なんだ!! あの時も言ったが私は君のことを姉のようにしか見ていなかった!!」
「私を特別だと言ったのはアレクシスよ!! 私はアレクシスの特別!! そうでしょう?」
「私にとってリタは姉のような特別な存在だったんだっ!! だが今思えば幼かったとはいえ君に特別だなんて言葉を私は使うべきではなかった」
ーー浅はかだった……。
「リタの言う特別とはなんだ? 君はただ私の妃になりたかっただけだろう?」
「ちがうわ!! 私はアレクシスのことをずっと好きだったのよ!!」
「それは絶対にちがう。私にはわかる。今ならわかるんだ!! 心から愛している人ならば、その相手が傷つくようなこと、苦しむようなことは出来ないはずだ!!」
ーーエレノアと出会って初めて知った相手を心から思いやる気持ちも、大切に守りたいという想いも。
「私はアレクシスの為を思って…… あのお姫様よりも私の方がアレクシスをよく知っているもの!!」
「リタに私のことがわかるはずなどないっ!! 私が今エレノアに寄せる特別な感情はリタが私を想う特別とは全くちがう!! 私はエレノアを笑顔にしたい、喜ばせたい、幸せにしたい、そう心から想うよ。私の特別な人はエレノアただ一人だけだっ!!」
「そんな…… でも…… 私じゃないと…… 私はアレクシスじゃないと……」
「手を放してくれ!! これ以上君と話すことは何もない」
私はリタの掴んだ手を思いっきり振り払いエレノアのもとへと向かった。
ーーエレノア……。