なかないでいいんだよ
今日は親友との集合時間が遅かったこともあって
もう十八時を過ぎていた。

もうすぐ十月になる。
陽が落ちるのが急に早くなった。

「メロ、お腹空いてる?」

「…」

「これね、一応メロのごはん…買ってみたんだけど…」

ウェットタイプの猫缶と
レトルトのキーマカレーをテーブルに並べてみる。

どう見ても異様な光景だった。

きょとん、と首を傾げたメロは
一度、目を閉じた。
長いまつ毛が蓋みたいに下瞼に影を落とす。

ゆっくりと目を開けて、
私を見つめる瞳。
私に″どうしてほしい″のか
委ねている目だった。

もう、おかしくなっちゃいそうだった。

誰にも求められない私を
悲しんだって、
私のことを一番嫌いなのは私だった。

大学に進んでまで励みたい勉学もない。
将来への夢も希望もない無気力な私は
ただお金を稼ぐ為だけに就職しようとしている。

非現実的すぎる今日を
どうにか正当化していないと、
私だって突飛な行動ができるんだって虚勢を張っていないと
カラッポな自分を心底憎んでしまいそうで怖かった。

この部屋には
″何か″があって救われたい猫と
なんにも無いから誰かの中心になってみたい、
くだらない女の呼吸が蜘蛛の糸みたいに絡まり合っているだけの、
地獄が存在している。
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