なかないでいいんだよ
猫缶をとって
メロの前にコン、って置いた。

猫缶をまじまじと見つめながら
そっと触れるメロ。

受け入れるのか。

誰にも監視なんてされていないのに。
この部屋は私だけがルールブック。
つまり無法地帯。

なのにメロは、
調教され過ぎている。

自分であることを静かに殺して
″何か″の為に
あの監獄に囚われている。

「メロ」

「ニャ」

「私、音って名前なの」

「にゃーあっ」

さっきも聞いたよ、って言いたげに
目を細めるメロ。

「呼んで」

「にぃ…」

「呼んで。音、って。私の名前を。…メロ」

「…………おと」

苦しそうに、
眉間に皺を寄せて

悲しそうに微笑んで
メロが私の名前を呼んだ。

世界一きれいなメロディーに聴こえてしまったんだ。
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