なかないでいいんだよ
メロの顔をまじまじと眺める。

二十二歳には見えない。
童顔だ。

髪の毛は、
これはいわゆる″ウルフカット″っていうやつか。

シルバーに染めていて
満月がよく似合いそうだった。

経歴はまだ半年。
カフェの中では一番の新人にして、
人気ナンバーワンだと記載されている。

「ねぇ」

「ん?」

「本当にキャットフード、食べるつもりだったの?」

「ご主人様の言いつけは絶対なので」

「なにそれ。お持ち帰りされてる間って盗撮でもされてんの」

「されてないけど。そうしたほうがチップも弾んでくれる」

「げっ…これってチップ制だったの?」

「お金持ちのおばさまはねー。けっこう弾んでくれるよ。その代わり″なんでも″言うこと聞くけど」

「…へぇ」

「さすがに音にはせがまないよ。きみ、未成年でしょ」

「でも十八歳にはなってるよ」

「学生でしょ」

「なんっ…!?知ってたの!?」

クイッて顎でしゃくって、
握っているスプーンで私の背後を示した。

振り返ったら、
ハンガー掛けしてあるセーラー服。

「あ」

「卒業してんのに制服をインテリアにしてる人なんてなかなかいないだろ」

「うぅ…どうしよう私、捕まっちゃうのかな」

「捕まる?あっははは…!言わないよ、言うわけないじゃん」

「なんで?これこそ脅しでもすればチップ出すかもよ?」

「しないよ」

「どうして」

「音はきっと、いい人だから」
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