なかないでいいんだよ
「音こそなんであんなとこ来たの」

「…バカになりたかったから?」

「真似しんぼ」

「あはは…。でも本当なの。バカになりたかった。私にはね、なんにも無いの」

「なんにも?」

「夏休み明けにね、高一から二年間付き合ってた彼氏にフラれたの。あー、そう言えば…このまま付き合ってたら来月には三年目に入るんだった」

はは、って乾いた笑い方をした私を
メロはただ静かに見つめていた。

「失恋したからなんにも無いの?」

「それだけじゃない。フラれたのは、元々ずっとなんにも無い私が原因だったから。無気力だったの、私。同級生みたいに夢があって、叶えたい将来があるからその為に大学に進んで勉強しようとか、大学生活への憧れはあるけど…やっぱり本分を思ったらしんどくて。どうしても学びたいことがあるわけじゃないのに学費はあまりにも高すぎるし。だったら就職して、このままここで暮らすのならちょっとでもおうちにお金を入れたほうが役には立つのかも、なんてこじつけて」

「こじつけなんだ?」
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