なかないでいいんだよ
「こじつけだよ。追い出されない為のね。本来あるべき居場所まで失くしてしまうのはさすがに怖かったし。毎日遅くまで働いてくれてる両親がちょっとでもラクになるのなら…って、それもきっとこじつけ。″理由があって私はこうしてます″って提示できない自分が情けなかった。勉強は嫌、だから就職します。だからと言ってやりたいことはありません。将来への希望も別にありません…って。そんな子、どこに魅力を見出せばいいか分かんないでしょ?無気力だった私は、夢がある彼には退廃的にしか映らなかったんだと思う」

「大人になったらさ」

「うん」

「全員に夢や希望があるわけじゃないよ」

「分かってる」

「夢に敗れて絶望してる人だっているし。夢をみたくても現実の暮らしが、なんとか明日一日だけでも呼吸を続けていかなきゃいけないことが、夢をみることを奪ってる人だっている」

「分かってる…」

「夢をみて、将来に希望を持って生きてる人のほうが稀なのかもしれない。夢は贅沢品なのかもな。ただ平凡に、当たり前に命が続いていくのならそれがきっと一番平和で安心できるのに」

「分かってるってば…!!!」
< 17 / 33 >

この作品をシェア

pagetop