なかないでいいんだよ
……なんて押し切られて、私は壁に顔を向けて丸まっている。

横には仰向けで
目を閉じているメロ。

できるだけ端に寄って
体を丸めているけれど
すごく近いことには変わりない。

これで安眠できるのなら
大人って分からない。

いや、これって私が女性として見られてないってこと?

ひょっとして、
落ち込まなきゃいけない状況なのかも。

そんなことを思っていたら
なんだかちょっとモヤモヤしてきちゃって
メロみたいに仰向けになってみた。

お腹の上で手のひらをクロスさせているのも真似してみる。

なんだか棺桶の中で
安らかに眠ってるみたい。

私の部屋の真下はリビングだ。
一時間くらい前に両親とも帰ってきていて
わずかな生活音が聞こえてくる。

「音」

ウィスパーボイスで名前を呼ばれて、
さっきまでとはちょっと違う雰囲気を感じてしまって冷静でいられない。

「ん」

「秘密の時間って感じだね」

「秘密だもん」

「そっか」

「なんかすっごくイケナイことしてる気分」

「してるんだよ」

「え」

「俺らは今すっごくイケナイことしてる。いかがわしい?ペットショップで働く成人男性が、職業を誤魔化した十八歳、未成年にお金でお持ち帰りされる夜。イケナイことでしょ?」

「いじわる」

「あー、でもそう言えば、十八歳ってもう成人なんだっけ」

「変だよね。お酒も煙草も禁止されたまま、責任と選挙権だけ与えられて。国にいいように遣われてる気がする」

「成人ならさ」

「うん」

「二十二歳と十八歳でも許されんのかな?」

「何を?」

「こーゆうこと」

メロが私の後頭部に手のひらを回して
顔を引き寄せられる。

スローモーションみたいに
ゆっくりと。

メロは私に
キス、するふりをした。
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