なかないでいいんだよ
「なに…」

「落ち込んじゃうね」

「なにが」

「俺もやっぱフツーの男なんだなって。魅力的な子とこういうことしてたらさ、普通の、ただの男に戻れたらいいのになって思っちゃうよね。バカになって、めちゃくちゃなことしたくなる」

魅力的な子。

私に言ってるの?

メロの理性を、
ちゃんと壊せる、可能性があるんだ。

なのに、それができない目をしているのはどうして?

「できないの?」

「普通の男に戻りたいなんて言ったらさ、俺はただの軽薄な人間になってしまうんだ。命を天秤にかけて、ラクなほうに流れようとしてる」

「……なにがあったの」

「音には、」

「関係ないなんて言わないで」

「音」

「関係ないなんて言うのなら、だったら本当にメロの事情なんて関係ないからさ。私、今ここでメロを襲っちゃうかもよ?なんにも無い女のままで別れたくないって、めちゃくちゃになって、メロのこと壊しちゃうかも」

「それができたらいいのにな」

メロの指先が
私の頬を撫でる。

優しくて
冷たい指先。
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