なかないでいいんだよ
ふわふわのウルフカットを撫でる。

右腕を顔に乗せて
メロは深い息を吐いた。

「私が大金持ちのマダムだったらよかったのに」

「あっはは。それで、俺に何を求める?」

「なんにも。あ、でも時々はこうやって丸まって一緒に眠りたいかも」

「それだけ?」

「それだけ。私とメロは他人同士なんだってちゃんと肌を合わせて感じたい。自分じゃない誰かも、どうしようもない悲しみや苦しみを抱えてなんとか生きてるんだって」

「そうだね。そうしよう」

「うん。そうしてようね」

私達はベッドで二人で丸まって
手を握って眠った。

もしかしたらメロには
恋人への罪悪感があったかもしれない。

それでもその夜は
ただ手を握って隣で眠ってくれた。

それがメロに支払った一万円の対価なら
一万円では足りないと思った。
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