なかないでいいんだよ
襟足
思っていた通り、
あっという間に季節は巡って、三月になった。

梅の花が色づき始めていて
視界にチラチラと赤や、
冬よりも濃くなってきた葉の緑を見ていると
自然と気持ちも穏やかになってくる。

明日、いよいよ卒業式を迎える。
就職の内定も無事に貰うことができて
卒業式が終わって、一ヶ月後には社会人になる。

夢はまだない。
それでもメロもおんなじように…ううん、私以上に我武者羅に生きているんだと思うと
前みたいには悲観しなくなってきた。

「おとっ…!」

「びっくりした…どうしたの?」

高校生活、最後の昼休み。
二月の途中からはほとんど自由登校になっていて
クラスメイトもまばらにしか登校していなかった。

今日は卒業前の最後の一日だから
クラスメイト全員が揃っている。

お弁当を食べて、
微睡(まどろみ)の中で
窓から見える校庭を眺めていた。

桜の木にはちらほらと蕾がつき始めた頃で
まだ緑色のほうが多かった。
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