なかないでいいんだよ
「知ってる!?ほら…」

親友はそう言いながら
周りを気にするみたいに声を(ひそ)めて
コソコソ話をするみたいに言った。

「あのペットカフェ…音がお持ち帰りした子、いたじゃない?」

メロ。

あれからもう半年が過ぎた。

今でも簡単に思い出せる。

狼みたいな目と
首筋に沿って伸びた襟足。

手を握ったまま丸くなって眠ったあの夜のこと。

メロは大切な人を
救えただろうか。

「いなくなったんだって…!」

「へぇー…………えっ!?」

「やっぱ知らなかったよね?私のお姉ちゃんの友達があそこの常連でさ。けっこうオキニだったみたい。それが突然いなくなって連絡もつかないって」

「その人は…けっこうお持ち帰りしてたのかな」

どうでもいいことを考えてしまった。

これは嫉妬だ。

親友のお姉さんは二十歳になったばかりで
お友達も同級生だとしたら
私よりも大人で、私よりも年齢が近い。
成人だし…。

私も年齢で言えば″成人″なんだけど。
なんていうか…ちゃんと成人、だし…。

って、メロにはそもそも恋人がいる。
しかも絶対に切れない絆で繋がっている。

第一、今そんなこと考えてる場合じゃないし。
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