なかないでいいんだよ
最初からそうするつもりで待ち合わせしていたかのように
私達は同じ方向へゆっくりと歩き出した。

おんなじ歩幅。

ううん、違う。

スラリと長いメロの脚が
私の歩幅に合わせてくれているんだって分かる。

「どこ行ってたの」

「逃げたんだ」

「無断で?」

「うん」

「メロらしくない…っていうか、たった一日のメロしか知らないから″らしくない″も何もないんだけどさ…。メロは筋はきっちり通す人だって感じたから」

「ちょこっと冷静になってさ。なんかそうやって音に叱られてる気がして。さっき店には謝りに行ってきたよ。辞めますってこともちゃんと言った」

「さっき?」

「うん。ついさっき」

「私も行ったんだよ。じゃあ入れ違いになっちゃったんだね」

「そっか。ごめん、タイミング悪くて」

「ううん。でも、じゃあなんでコンビニに?」

「本当は音の家に行こうか迷ったんだ。でもご両親が居たら困るしストーカーみたいで怖いだろ?コンビニだったら奇跡的に会えたとして、もし音が不快感を現したら偶然ってことで誤魔化せるかなって」

「あはは。いろいろ考えてくれたんだね。ありがとう」

「ううん。でも音も俺を探してくれてたって知って嬉しかった。ありがとう」

「ううん」

自宅のそばの公園で私達は立ち止まった。

ここの木にも梅の花が咲き始めている。
空は晴れていて
ぽかぽかと気持ちのいい夕暮れ前だった。
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