なかないでいいんだよ
「で?決めたの?」

「ん?」

「その子。連れて帰るのか」

ゲージから出してもらって
ただ私の隣で体を丸めているだけの″メロ″を親友は指差して首を傾げた。

「んー、なんか……んー…道を踏み外す気がする」

「なんでよっ!」

大口を開けて笑う親友の、
面白いことならなんでもウェルカムな性格は羨ましい。

常識なんて脱ぎ捨ててしまえたら
世界はきっともっと楽しいことで溢れているのに。

「一応認可なんでしょ?時代だねー」

私達の親世代みたいな口ぶりで
親友はシュナの頭を撫でた。

あー。
どうせこのまま帰ったって
一人になったらまた自分のダメさに勝手に大反省会して落ち込んじゃうだけだから。

これからの人生、
きっと今日より″異常″なことなんて山ほどあるんだからっ!

帰り道。

私と親友、その隣にもうひとつ、影が増えた。

私は今日、
自分を慰める為だけに
命を買った。

一万円。

ふざけている″価値″だ。

この子は私なんかに簡単に価値を決められていいような存在じゃないのに。

私の指先から一万円札が抜き取られた瞬間に
私と″メロ″は
共犯者になった。
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