Destination 〜ロマンス行き片道切符【新作】〜
「ほらね?」
窓側の席に座った私も、ボストンから同じ文庫本を取り出してみせた。
「ホントだ。クリスティ好きなんですか?」
「ええ。でも、最近は日本のイヤミスにハマってて。真梨幸子とか、あと…」
私は、初対面でいきなり親しくなれるか、何十年経っても馴染めないか、相手次第という両極端なタイプだが、この彼は前者のようだ。
本の話だけでも、かなり会話が弾んだ。
もう、若さで突っ走れるような年齢でもなく、この彼にしても、私よりは若く見えるが、それでも既にいい大人だ。
分別盛りと呼ばれる年頃になって、まさか1冊の文庫本がきっかけで、見知らぬ人とすぐに打ち解けるなんて思わなかった。
「そうだ。ゆで卵食べます?」
私がバッグから幾つかの卵を取り出すと、
「ありがとう…って、あはは!一体いくつ持ってきてるんですか?板東英二じゃないんだから。じゃあ、僕のチョコと交換しましょう」
窓側の席に座った私も、ボストンから同じ文庫本を取り出してみせた。
「ホントだ。クリスティ好きなんですか?」
「ええ。でも、最近は日本のイヤミスにハマってて。真梨幸子とか、あと…」
私は、初対面でいきなり親しくなれるか、何十年経っても馴染めないか、相手次第という両極端なタイプだが、この彼は前者のようだ。
本の話だけでも、かなり会話が弾んだ。
もう、若さで突っ走れるような年齢でもなく、この彼にしても、私よりは若く見えるが、それでも既にいい大人だ。
分別盛りと呼ばれる年頃になって、まさか1冊の文庫本がきっかけで、見知らぬ人とすぐに打ち解けるなんて思わなかった。
「そうだ。ゆで卵食べます?」
私がバッグから幾つかの卵を取り出すと、
「ありがとう…って、あはは!一体いくつ持ってきてるんですか?板東英二じゃないんだから。じゃあ、僕のチョコと交換しましょう」