王子様が、私だけに甘過ぎます!
私は、恋とかそういうのがよく分からなくて。
どちらかというと、あの件以来どうしても男子から一線を置いてしまうタイプ。
緊張して何を話せばいいのか分からないし、何より少し怖いと思ってしまう。
それはきっと、周りの女子達の恋愛模様を聞いて耳年増になっているのも要因かもしれなかった。
『ねぇ聞いてよ!私また浮気されたんだけど!』
『めっちゃひっどい振られ方された!!』
『二股とか有り得なくない?!』
本当にそういうことに疎い私だから、浮気とか振られるとか、そういう感覚は分からない。
でも、友達同士の輪の中でそんな風に言ってくる子達の気持ちは、本当に傷付いているんだって、それだけはしっかりと伝わってくるから…。
自分がその立場になったら…と思うと絶望しかない…と思わざるを得ない。
親友のよっちゃんやえみちゃんは、「葉子はもっと自分に自信持ちなよ〜」って言ってくれるけど。
どうやったら、自信なんて付くんだろう??
そんな中だった。
光樹くんに告白されたのは。
最初に呼び出された時は、何か校則を破ったり大きな失態をしてしまったのかと、冷や汗を掻いた。
だって、相手は生徒会会長で、学園一イケメンな男の子で…しかも「氷の王子様」なんて称されてる人だったから。
なんで、自分が呼び出されているのか、いまいち状況が飲み込めなくて、制服のスカートをギューッと握り締めたまま、呼ばれた場所…生徒会室のドアを恐る恐る開くと、そこには逆光で一瞬顔が見えなかったけど、サラサラの黒髪だけが見えて…。
「永井葉子さん、だよね?」
凛、とした声。
心地よい低音の声に、何も返事が出来なくてコクコクと首を振るだけの私に、光樹くん…彼は笑って、
「よかった。違う人が来たらどうしようかと思ってた」
「え、っと…あの…どうして私の名前…?」
困り顔の私に対して、光樹くんは何でもないことのように、にっこりと微笑んで言う。
「だって、永井さんが好きだから」
「…へぁ?」
突然過ぎる出来事に、思わず変な声が出てしまう。
そんな私を見て、光樹くんは構わずに言葉を繋ぐ。
「こんな俺だけど、付き合って貰えないかな?」
「や、あ…あの、ちょ、でも…っ」
すっかり困惑する私。
それでも、光樹くんは食い下がらない。
「ねぇ?俺じゃ、…ダメ?」
「ダメとか、そういうんじゃなくって、その…」
「なぁに?」
「こういうのはお互いよく知ってからじゃないと…」
断るつもりで、そう言うと光樹くんはにっこり笑って、
「じゃあ、これから知ってけばいいってことだよね?」
と返された。
私はあまりの強引さに瞳を大きく開いて、更には口をパクパクさせて、光樹くんのことを見つめると、光樹くんはまたまた楽しそうに、
「永井さん、目、落っこちちゃうよ?」
と笑い掛けてきた。
「だって、一条くん…」
「至って真面目だよ?」
「え…?」
「俺は、一時の感情で人の気持ちを支配しようとするような奴じゃないから。…それだけは覚えておいて?…それと、本気で付き合うってこと、永井さんも真剣に考えてくれると嬉しいな」
キリッとした視線に身を絡め取られるような錯覚を覚えた。
気付いたら、また言葉もなくコクコクと首を縦に振っていて、光樹くんは優しい顔で「ありがとう」と言ってくれた。
あれ?
私今OKしちゃったの?
そう思ってももう遅い。
光樹くんはそっと私の手を取って、
「じゃあ、宜しくね?俺の可愛い彼女さん」
なんて、今日イチの笑顔を向けて来たから。
でも、今更『無理です、付き合えません』なんてことは言えずに、俯いてしまった私に視線を合わせて、光樹くんはじっとその深いこげ茶色の瞳で私を見てから、
「絶対に幸せにするからね」
と、まるで本物の…絵本の中から出て来た王子様のような身のこなしで、私にプロポーズするように言ったんだ…。
「よーこ?」
「……へ?」
「彼氏が隣にいるのに、何考えてんの?嫉妬しちゃうなぁ?」
きゅ
指が絡む手の繋ぎ方。
この感触が、気恥ずかしくて…。
だけど、なんだかふわふわして嬉しくなるんだ。
「ねーぇ?なーに考えてたの?」
「…う」
「ん?」
「み、光樹くんの…こと…、だよ?」
そう言ってから、なんて照れくさい言葉を発してしまったのかと、反射的に光樹くんの手を思い切り握り締めると、くすり、と私よりずっと背の高い光樹くんが、笑った。
なんだか、光樹くんは私といると笑っていることが多い気がする…。
もしかしたら、それは物凄く自信過剰なことを思ってるのかもしれないけれど。
「あーもー…葉子、可愛い。ここが外じゃなかったら、思いっ切り抱き締めちゃうんだけどなぁ」
「ちょ、光樹くん!?」
「うーそ。…でもないけど、ごめんね?からかい過ぎちゃったね。許して?」
「別に…怒ってないもん」
ぷくっと頬を少しだけ膨らますと、そこをちょん、と突かれて、また「可愛い」と言われた。
…光樹くんは、実は目がとても悪いんじゃないかなぁ…?
こんな平々凡々な容姿の私を、可愛い、可愛いって、毎日よく飽きないなってくらい言ってくれるけど…。
ねぇ?
私って、そこまで可愛くないんだよ?
どちらかというと、あの件以来どうしても男子から一線を置いてしまうタイプ。
緊張して何を話せばいいのか分からないし、何より少し怖いと思ってしまう。
それはきっと、周りの女子達の恋愛模様を聞いて耳年増になっているのも要因かもしれなかった。
『ねぇ聞いてよ!私また浮気されたんだけど!』
『めっちゃひっどい振られ方された!!』
『二股とか有り得なくない?!』
本当にそういうことに疎い私だから、浮気とか振られるとか、そういう感覚は分からない。
でも、友達同士の輪の中でそんな風に言ってくる子達の気持ちは、本当に傷付いているんだって、それだけはしっかりと伝わってくるから…。
自分がその立場になったら…と思うと絶望しかない…と思わざるを得ない。
親友のよっちゃんやえみちゃんは、「葉子はもっと自分に自信持ちなよ〜」って言ってくれるけど。
どうやったら、自信なんて付くんだろう??
そんな中だった。
光樹くんに告白されたのは。
最初に呼び出された時は、何か校則を破ったり大きな失態をしてしまったのかと、冷や汗を掻いた。
だって、相手は生徒会会長で、学園一イケメンな男の子で…しかも「氷の王子様」なんて称されてる人だったから。
なんで、自分が呼び出されているのか、いまいち状況が飲み込めなくて、制服のスカートをギューッと握り締めたまま、呼ばれた場所…生徒会室のドアを恐る恐る開くと、そこには逆光で一瞬顔が見えなかったけど、サラサラの黒髪だけが見えて…。
「永井葉子さん、だよね?」
凛、とした声。
心地よい低音の声に、何も返事が出来なくてコクコクと首を振るだけの私に、光樹くん…彼は笑って、
「よかった。違う人が来たらどうしようかと思ってた」
「え、っと…あの…どうして私の名前…?」
困り顔の私に対して、光樹くんは何でもないことのように、にっこりと微笑んで言う。
「だって、永井さんが好きだから」
「…へぁ?」
突然過ぎる出来事に、思わず変な声が出てしまう。
そんな私を見て、光樹くんは構わずに言葉を繋ぐ。
「こんな俺だけど、付き合って貰えないかな?」
「や、あ…あの、ちょ、でも…っ」
すっかり困惑する私。
それでも、光樹くんは食い下がらない。
「ねぇ?俺じゃ、…ダメ?」
「ダメとか、そういうんじゃなくって、その…」
「なぁに?」
「こういうのはお互いよく知ってからじゃないと…」
断るつもりで、そう言うと光樹くんはにっこり笑って、
「じゃあ、これから知ってけばいいってことだよね?」
と返された。
私はあまりの強引さに瞳を大きく開いて、更には口をパクパクさせて、光樹くんのことを見つめると、光樹くんはまたまた楽しそうに、
「永井さん、目、落っこちちゃうよ?」
と笑い掛けてきた。
「だって、一条くん…」
「至って真面目だよ?」
「え…?」
「俺は、一時の感情で人の気持ちを支配しようとするような奴じゃないから。…それだけは覚えておいて?…それと、本気で付き合うってこと、永井さんも真剣に考えてくれると嬉しいな」
キリッとした視線に身を絡め取られるような錯覚を覚えた。
気付いたら、また言葉もなくコクコクと首を縦に振っていて、光樹くんは優しい顔で「ありがとう」と言ってくれた。
あれ?
私今OKしちゃったの?
そう思ってももう遅い。
光樹くんはそっと私の手を取って、
「じゃあ、宜しくね?俺の可愛い彼女さん」
なんて、今日イチの笑顔を向けて来たから。
でも、今更『無理です、付き合えません』なんてことは言えずに、俯いてしまった私に視線を合わせて、光樹くんはじっとその深いこげ茶色の瞳で私を見てから、
「絶対に幸せにするからね」
と、まるで本物の…絵本の中から出て来た王子様のような身のこなしで、私にプロポーズするように言ったんだ…。
「よーこ?」
「……へ?」
「彼氏が隣にいるのに、何考えてんの?嫉妬しちゃうなぁ?」
きゅ
指が絡む手の繋ぎ方。
この感触が、気恥ずかしくて…。
だけど、なんだかふわふわして嬉しくなるんだ。
「ねーぇ?なーに考えてたの?」
「…う」
「ん?」
「み、光樹くんの…こと…、だよ?」
そう言ってから、なんて照れくさい言葉を発してしまったのかと、反射的に光樹くんの手を思い切り握り締めると、くすり、と私よりずっと背の高い光樹くんが、笑った。
なんだか、光樹くんは私といると笑っていることが多い気がする…。
もしかしたら、それは物凄く自信過剰なことを思ってるのかもしれないけれど。
「あーもー…葉子、可愛い。ここが外じゃなかったら、思いっ切り抱き締めちゃうんだけどなぁ」
「ちょ、光樹くん!?」
「うーそ。…でもないけど、ごめんね?からかい過ぎちゃったね。許して?」
「別に…怒ってないもん」
ぷくっと頬を少しだけ膨らますと、そこをちょん、と突かれて、また「可愛い」と言われた。
…光樹くんは、実は目がとても悪いんじゃないかなぁ…?
こんな平々凡々な容姿の私を、可愛い、可愛いって、毎日よく飽きないなってくらい言ってくれるけど…。
ねぇ?
私って、そこまで可愛くないんだよ?