🌊 海の未来 🌊 ~新編集版~
2日目が始まった。
「本日のテーマは『海の環境をどうやって守っていくか』です。議論に先立って、環境保全庁の源長官からお話を伺います」
源は谷和原に目礼をしてから立ち上がったが、発した声は厳しかった。
「海は汚れています。いや、私たち人間が汚しています。産業廃棄物、生活用水、一般のごみ、更には、プラスチック、多種多様な汚染物質に海は悲鳴を上げています。人間の営みの多くが海洋汚染につながっているのです」
海に漂うプラスチックごみの写真がスクリーンに映し出された。
「プラスチックは生活を便利にしてくれました。しかし今、私たちに害を及ぼそうとしています」
太平洋全体を見渡した航空写真が映し出された。
「直径5ミリ以下の小さなプラスチックが、近海だけでなく外洋に広がっています。太平洋の広い海域に浮遊しているのです」
小さなプラスチックが拡大されて映し出された。
「これ以上分解されない状態になったマイクロプラスチックは植物プランクトンと間違えて動物プランクトンに食べられ、それが食物連鎖によって、より大型の魚の体内に入っていきます。それを食べた人間の体内にも当然入ってきます。更に、」
源の顔が強ばった瞬間、スライドが変わった。
網に絡まれて動きが取れなくなった海鳥の姿が映し出された。
「漁網の海上不法投棄によって多くの海鳥が死んでいます。大型の海獣や魚も網に絡まって死んでいます。心無い漁師が引き起こす悲惨な事故です」
権家と長男、粋締と取出が唇を噛んだ。
それを合図にするようにスライドが変わった。
石油コンビナートを出港したタンカーが大海原を航行していた。
しかし、次のスライドには、その船が座礁している姿が映し出されていた。
「タンカーから膨大な量の石油が流出しています」
石油で真っ黒になった海鳥のスライドに変わった。
「こうなったら飛び立つことも魚を捕ることもできません」
会場は水を打ったように静まり返った。
するとまた画面が変わって、南国の楽園のような白砂のビーチが映し出された。
しかし次の瞬間、そのビーチは真っ黒になった。
「海上油井施設で起きた事故の写真です。タンカー事故とは比べ物にならない膨大な量の石油が流出しました。その結果、多くの魚類、貝類、鳥類が死に、白い砂浜は真っ黒な浜になってしまいました。その影響は今後何十年も続くことになるでしょう」
黒浜のスライドの上に、白い文字が浮き上がった。
『聞こえませんか? 海の悲鳴が!』
沈黙が会場を支配した。
誰も息をしていないようで、時が凍ったように感じられた。
それはスライドが消えて源長官が着席しても変わらなかった。
それが永遠に続くかと思われた時、NPO法人代表の大和が手を上げた。
そして、源の言葉を噛みしめるような表情で立ち上がり、ゆっくりと会場を見回した。
「本日のテーマは『海の環境をどうやって守っていくか』です。議論に先立って、環境保全庁の源長官からお話を伺います」
源は谷和原に目礼をしてから立ち上がったが、発した声は厳しかった。
「海は汚れています。いや、私たち人間が汚しています。産業廃棄物、生活用水、一般のごみ、更には、プラスチック、多種多様な汚染物質に海は悲鳴を上げています。人間の営みの多くが海洋汚染につながっているのです」
海に漂うプラスチックごみの写真がスクリーンに映し出された。
「プラスチックは生活を便利にしてくれました。しかし今、私たちに害を及ぼそうとしています」
太平洋全体を見渡した航空写真が映し出された。
「直径5ミリ以下の小さなプラスチックが、近海だけでなく外洋に広がっています。太平洋の広い海域に浮遊しているのです」
小さなプラスチックが拡大されて映し出された。
「これ以上分解されない状態になったマイクロプラスチックは植物プランクトンと間違えて動物プランクトンに食べられ、それが食物連鎖によって、より大型の魚の体内に入っていきます。それを食べた人間の体内にも当然入ってきます。更に、」
源の顔が強ばった瞬間、スライドが変わった。
網に絡まれて動きが取れなくなった海鳥の姿が映し出された。
「漁網の海上不法投棄によって多くの海鳥が死んでいます。大型の海獣や魚も網に絡まって死んでいます。心無い漁師が引き起こす悲惨な事故です」
権家と長男、粋締と取出が唇を噛んだ。
それを合図にするようにスライドが変わった。
石油コンビナートを出港したタンカーが大海原を航行していた。
しかし、次のスライドには、その船が座礁している姿が映し出されていた。
「タンカーから膨大な量の石油が流出しています」
石油で真っ黒になった海鳥のスライドに変わった。
「こうなったら飛び立つことも魚を捕ることもできません」
会場は水を打ったように静まり返った。
するとまた画面が変わって、南国の楽園のような白砂のビーチが映し出された。
しかし次の瞬間、そのビーチは真っ黒になった。
「海上油井施設で起きた事故の写真です。タンカー事故とは比べ物にならない膨大な量の石油が流出しました。その結果、多くの魚類、貝類、鳥類が死に、白い砂浜は真っ黒な浜になってしまいました。その影響は今後何十年も続くことになるでしょう」
黒浜のスライドの上に、白い文字が浮き上がった。
『聞こえませんか? 海の悲鳴が!』
沈黙が会場を支配した。
誰も息をしていないようで、時が凍ったように感じられた。
それはスライドが消えて源長官が着席しても変わらなかった。
それが永遠に続くかと思われた時、NPO法人代表の大和が手を上げた。
そして、源の言葉を噛みしめるような表情で立ち上がり、ゆっくりと会場を見回した。