🌊 海の未来 🌊 ~それは魚の未来、そして人類の未来~ 【新編集版】
「あっ、あの~、只今ご紹介に預かりました、大日本魚食の幸夢美久と申します」
できるだけゆっくり深く頭を下げた。
そして、できるだけゆっくり頭を上げた。
話すことを考える時間が欲しかったからだ。
するとどうしてかいきなりシュゴーシン・サルマン社長の顔が浮かんできた。
その瞬間、口が動き出した。
「アラスカで出会った水産会社の社長から多くのことを教えていただきました。中でも、『魚は危機に瀕している。そのすべての原因は乱獲だ。それは、魚を商品としてしか見ない愚か者の仕業だ。嘆かわしい』『魚は商品ではない。魚は資源だ』『水産会社は魚の命を扱う会社なのだから、自然の恵みに感謝して、自然が育む命を尊ばなければならないのだ』という言葉には強い衝撃を受けました。そして、『人間は大バカ者だ。自然によって生かされていることを忘れ、母なる自然を痛めつけている。地球の主のような振舞いで好き勝手なことをしているんだ。本当に嘆かわしい』という言葉を聞いた時は、本当に胸が痛くなりました」
そこで呼吸を整えて、その時のことを思い浮かべながら言葉を継いだ。
「その水産会社で海と魚に関する映像を見せていただきました。その中で漁師が語った言葉が忘れられません。彼はこう言ったのです。『私たち人間はすべての生き物と共存しなければならないのです。地球のすべての生き物はお互いに支え合っているのです。だから、人間だけ栄えるということはあり得ません。共存共栄なのです』と」
言ったとたん、涙が出てきそうになった。
でも、ぐっとこらえた。
「その映像は、ある言葉で締めくくられていました」
それを言おうとすると、涙声になった。
「『命は繋がっています』という言葉でした」
たまらずしずくが頬を伝わった。
「持続可能な幸福循環を……」
嗚咽を止めようと右手を唇に当てた。
しかし、唇だけでなく手や肩の震えが止まらなくなり、立っていられなくなった。
崩れ落ちそうになった。
〈もうダメ〉と思った瞬間、誰かの手が肩を優しく抱いてくれた。
海利社長だった。
そのお陰でなんとか耐えることができたし、前を向くこともできた。
すると息を呑んでいたような会場にホッとしたような雰囲気が漂い、それに促されるように粋締が立ち上がって拍手を始めると出席者が一人二人と立ち上がった。
全員が立ち上がって拍手をするのに時間はかからなかった。
しばらくして拍手が鳴り止み、全員が着席したのを見届けて、谷和原が口を開いた。
「ありがとうございました」
丁寧に頭を下げた。
「素晴らしいお話でした。心に染み渡りました。そして、更に心が一つになったような気がします」
そして、もう一度丁寧に頭を下げてから豪田に視線を送った。
「大臣、よろしくお願い致します」
頷いた彼女が立ち上がり、何かに立ち向かうような表情で口を開いた。
できるだけゆっくり深く頭を下げた。
そして、できるだけゆっくり頭を上げた。
話すことを考える時間が欲しかったからだ。
するとどうしてかいきなりシュゴーシン・サルマン社長の顔が浮かんできた。
その瞬間、口が動き出した。
「アラスカで出会った水産会社の社長から多くのことを教えていただきました。中でも、『魚は危機に瀕している。そのすべての原因は乱獲だ。それは、魚を商品としてしか見ない愚か者の仕業だ。嘆かわしい』『魚は商品ではない。魚は資源だ』『水産会社は魚の命を扱う会社なのだから、自然の恵みに感謝して、自然が育む命を尊ばなければならないのだ』という言葉には強い衝撃を受けました。そして、『人間は大バカ者だ。自然によって生かされていることを忘れ、母なる自然を痛めつけている。地球の主のような振舞いで好き勝手なことをしているんだ。本当に嘆かわしい』という言葉を聞いた時は、本当に胸が痛くなりました」
そこで呼吸を整えて、その時のことを思い浮かべながら言葉を継いだ。
「その水産会社で海と魚に関する映像を見せていただきました。その中で漁師が語った言葉が忘れられません。彼はこう言ったのです。『私たち人間はすべての生き物と共存しなければならないのです。地球のすべての生き物はお互いに支え合っているのです。だから、人間だけ栄えるということはあり得ません。共存共栄なのです』と」
言ったとたん、涙が出てきそうになった。
でも、ぐっとこらえた。
「その映像は、ある言葉で締めくくられていました」
それを言おうとすると、涙声になった。
「『命は繋がっています』という言葉でした」
たまらずしずくが頬を伝わった。
「持続可能な幸福循環を……」
嗚咽を止めようと右手を唇に当てた。
しかし、唇だけでなく手や肩の震えが止まらなくなり、立っていられなくなった。
崩れ落ちそうになった。
〈もうダメ〉と思った瞬間、誰かの手が肩を優しく抱いてくれた。
海利社長だった。
そのお陰でなんとか耐えることができたし、前を向くこともできた。
すると息を呑んでいたような会場にホッとしたような雰囲気が漂い、それに促されるように粋締が立ち上がって拍手を始めると出席者が一人二人と立ち上がった。
全員が立ち上がって拍手をするのに時間はかからなかった。
しばらくして拍手が鳴り止み、全員が着席したのを見届けて、谷和原が口を開いた。
「ありがとうございました」
丁寧に頭を下げた。
「素晴らしいお話でした。心に染み渡りました。そして、更に心が一つになったような気がします」
そして、もう一度丁寧に頭を下げてから豪田に視線を送った。
「大臣、よろしくお願い致します」
頷いた彼女が立ち上がり、何かに立ち向かうような表情で口を開いた。