🌊 海の未来 🌊 ~新編集版~
 お魚雲……、
 
 会議が終わり、会場を出て何気なく見上げると、青空を泳ぐように動く魚の形をした雲が見えた。
 ゆっくりと幸せそうに泳いでいるようだった。
 
「何処に行くの?」

 しかし、お魚雲は何も答えず、気持ち良さそうに泳いでいた。

「海に帰るの?」

 もう一度呼びかけると頷いたように見えたので、「気をつけてね」と見送った。
 そして、交差点に向かって歩き出した。
 
 信号が青に変わった。
 一歩踏み出すと、何かが聞こえたような気がした。
 空からのようだった。
 
「あなたはどうするの?」

 見上げると、お魚雲が振り向いていた。

「もう決めたの?」

 心配そうな声だった。

「どっちを選ぶの?」

 2人の顔が空に浮かんだ。

「あなたならどうする?」

 しかし返事が届く前にクラクションが鳴った。
 車道で立ち止まっていた。
 慌てて渡って息を整えてからもう一度空を見上げると、お魚雲はどこにもいなかった。


< 107 / 111 >

この作品をシェア

pagetop