🌊 海の未来 🌊 ~新編集版~
「同質競争から脱皮しないと、会社の存続そのものが危ぶまれます」

 カラカラになった喉から声を絞り出すと「続けて」と促された。
 社長の顔が真剣そのものだったのでなんとか頷いたが、喉がカラカラで声が出なかった。
 秘書が出してくれたお茶を一口飲んで、大きく息をして気持ちを整えた。
 
「日本の水産業は大きな岐路に立っています」

 声が掠れた。
 もう一口お茶を飲んだ。
 
「我が社のような中堅規模の会社が大手と同じ土俵で争っても勝ち目はないと思います。入社してまだ6年の経験しかないわたしが偉そうなことを言うようですが、社内の若い社員は皆同じ気持ちだと思います」

 社長の視線が前から、部長の視線が横から突き刺さったように感じたが、それを振り払って声を絞り出した。
 
「今までのような薄利多売の商売はもう限界だと思います」

 言ってしまった。
 偉そうなことを社長に言ってしまった。
 膝に置いた手が震え始めた。
 
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