🌊 海の未来 🌊 ~新編集版~
🌊 幸せな味 🌊
「ただいま」
「お帰り」
台所から母の声がした。
「早かったのね。お疲れ様」
母の穏やかな笑顔にはいつも癒される。
「夕食は何?」
「あなたが好きなものよ。当ててみて」
悪戯っぽい笑顔が、なんか可愛い。
「わたしの好きなもの……、う~ん……、わかんない」
「諦めが早いのね」
人差し指で鼻をチョンと突かれた。
そして、「シャワーを浴びてらっしゃい」と背中を軽く押されたので、部屋で着替えて浴室へ行った。
髪を乾かしてスキンケアをしてから居間に行くと、父が椅子に座って新聞を読んでいた。
声をかけずに座ると、ちらっと目を上げて「お帰り。早かったな」と母と同じことを言った。
「たまには定時で帰ってもいいかなって……」
社長面談の気疲れで残業する余力がなかったというのが本当のところだったが、そんなことを言っても仕方がないので、差しさわりのないことを口にした。
すると父は〈ふ~ん〉というような表情を浮かべたが、それを口にすることはなく、また新聞を読み始めた。
仕方がないのでボーっとして座っていると、母が料理を運んできた。
「じゃじゃ~ん」
「わっ、これ」
「あなたの大好物でしょ」
なめろうだった。
一気に元気になった。
「お母さん、だ~い好き」
思わず甘えた声が出たが、それには訳があった。
母が作るなめろうは、青魚の叩き具合といい、味噌の塩梅といい、本当に絶妙で最高なのだ。
漁師宿で出されるものに負けないくらいのおいしさなのだ。
だから、いつも舐めるように食べる。
ニンマリしていると、父が日本酒と切子グラスを持ってきた。
いつも晩酌はビールで始まるのだが、今日は〈なめろう〉と日本酒をちびちびやって楽しむという趣向なのだろう。
飲む前からニコニコしている。
「ただいま」
「お帰り」
台所から母の声がした。
「早かったのね。お疲れ様」
母の穏やかな笑顔にはいつも癒される。
「夕食は何?」
「あなたが好きなものよ。当ててみて」
悪戯っぽい笑顔が、なんか可愛い。
「わたしの好きなもの……、う~ん……、わかんない」
「諦めが早いのね」
人差し指で鼻をチョンと突かれた。
そして、「シャワーを浴びてらっしゃい」と背中を軽く押されたので、部屋で着替えて浴室へ行った。
髪を乾かしてスキンケアをしてから居間に行くと、父が椅子に座って新聞を読んでいた。
声をかけずに座ると、ちらっと目を上げて「お帰り。早かったな」と母と同じことを言った。
「たまには定時で帰ってもいいかなって……」
社長面談の気疲れで残業する余力がなかったというのが本当のところだったが、そんなことを言っても仕方がないので、差しさわりのないことを口にした。
すると父は〈ふ~ん〉というような表情を浮かべたが、それを口にすることはなく、また新聞を読み始めた。
仕方がないのでボーっとして座っていると、母が料理を運んできた。
「じゃじゃ~ん」
「わっ、これ」
「あなたの大好物でしょ」
なめろうだった。
一気に元気になった。
「お母さん、だ~い好き」
思わず甘えた声が出たが、それには訳があった。
母が作るなめろうは、青魚の叩き具合といい、味噌の塩梅といい、本当に絶妙で最高なのだ。
漁師宿で出されるものに負けないくらいのおいしさなのだ。
だから、いつも舐めるように食べる。
ニンマリしていると、父が日本酒と切子グラスを持ってきた。
いつも晩酌はビールで始まるのだが、今日は〈なめろう〉と日本酒をちびちびやって楽しむという趣向なのだろう。
飲む前からニコニコしている。