🌊 海の未来 🌊 ~新編集版~
 次はテーブルの準備だ。
 箸と取り皿と発泡酒とグラスを準備して、鍋敷きを置いてから、鍋を持ってきた。
 しかし、まだ蓋は開けない。
 発泡酒を注ぐ儀式があるのだ。
 グラスの三分の二のところまで垂直に勢いよく注ぎ、一瞬間を置いてから、泡を壊さないようにグラスの淵に沿ってゆっくりと注ぎ、泡がこぼれないようにギリギリのところで止めた。
 流儀というほどではないが、これがいつものやり方なので外すことはできない。
 
 乾杯! 

 完璧な泡に仕上がったグラスを上げてぐいっと飲むと「このために生きているようなもんだからな」と思わず呟いてしまったが、更に一口流し込んで、ゆっくりと鍋の蓋を上げた。湯気が立ち上がると、生唾が出てきた。
 それをゴクンと飲み込んで、小さなしゃもじで豆腐をすくった。
 
 取り皿の中で豆腐を四分の一に切った。
 大きいまま一気に食べると口の中を火傷するからだ。
 念のために、その上にポン酢をかけて冷やしておく。
 そして、白菜とネギと椎茸をすくって、最後に豚肉を入れて、その上からポン酢をかける。これで準備万端だ。
 
 食べる順番も決めている。
 豚肉を白菜の柔らかい部分で巻き、ゆっくりと口に運ぶ。
 火傷しないように熱さを確かめながらゆっくりと噛む。
 豚肉の肉汁が口の中に広がると、思わず頬が緩んだ。
 豚肉と白菜とポン酢のコラボレーションが最高で、しばらく余韻に浸った。
 それからネギと椎茸を食べ、最後に豆腐を食す。
 これも白菜の柔らかい部分で巻いて食べる。火
 傷しないように慎重に口に運ぶが、左手にはグラスを持って、いつでも発泡酒で口の中を冷やせるようにしておく。
 
 大丈夫だ。
 丁度良い熱さで言うことなし!
 
 飲み込んだあと、ゆっくりと発泡酒を流し込むと、幸せすぎてまたまた頬が緩んだ。
 
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