🌊 海の未来 🌊 ~それは魚の未来、そして私たちの未来~    【新編集版】
 昼食休憩をはさんで午後の会議が始まった。
 水産資源の保護のために漁獲規制が必要ということを、再度、真守賀と大和が、そして、粋締が強調した。
 しかし、午前中に既得権と名指しされて怒り心頭に発している権家は黙っていなかった。
 
「漁獲規制して収入が減ったら保証してくれるのか? 前回の会議では『補助金は悪』とかなんとか言っていた若造がいたらしいが、なんにもわかっていない。船のガソリン買う金に四苦八苦している漁師が多いのを知らないのか、バカヤローが!」

 すると顔が真っ赤になって手を上げた粋締を大和が必死に押し止めて「漁獲規制をすれば儲かるのです」と冷静な口調で伝えたが、権家には通じなかった。

「そんなわけないだろ。バカなことを言うんじゃない」。

 しかし、睨みつけられても大和が落ち着きをなくすことはなかった。
 
「よく聞いてください。生物学的な統計に基づいて魚種別の漁獲量を決め、それを個別に落とし込んでいく。そうすることで魚の資源の安定と漁師の収入の増加が図れるのです」

「なに夢みたいなことを言ってるんだ。お前は馬鹿か!」

 すかさず権家が(さげす)むような目で大和を見たが、それで終わることはなく、「漁の現場を知らない素人にいつまで戯言を言わしとくんだ」と今度は事務次官を睨みつけた。

「申し訳ございません……」

 言いかけた谷和原の太ももを豪田がすかさず(つね)った。
 それが余りに痛かったのか、谷和原が目をひん剥いた。
 
「大臣……」

 泣きそうな顔で恨めしそうに豪田の顔を見た。


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